第263話 交歓

家から歩いて30分くらいの神社に古い大きな樹がある。わたしは散歩がてらちょくちょく訪れる。


樹齢何年だかわからない。初めて見たときは冬で葉もなかったから、もう枯れていると思った。が、春になると花をつけた。死んでいると思っていた樹が生きているという単純な驚き。思わず大樹に身を寄せた。


以来、わたしはこの老木にしばし身をあずけるためにこの神社にくるようになった。ただ寄りかかって時間を過ごすだけ。何かを語りかけるでもなく当然何かが聞こえるわけでもなく、ただ触れて存在を感じるだけ。

ただそれだけ。


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