第258話 舞台

家に帰ると門柱にある表札が違っている。わたしの名字じゃない。どういうことかしら。

だけど、やっぱりここはわたしの家。家族に変わりはない。表札のことは触れにくくて何も言わなかったけど。


翌日から職場ではあたり前のように表札に書いてあった名字で呼ばれるようになっていた。確認してみると運転免許証もそう。なにからなにまで表札の名字。最初からその名字がわたしの名字であるかのよう。


別にそれで支障はないんだけど、なんだか違うのよねえ。その配役を演じているようで、本当のわたしはどこかへ消えてしまったみたいな心持ちがする。


世界が書き割りのよう。


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