第102話 乗り物

やられた。

身体が重い。影に入られたな、これは。


今まで木陰のベンチで休んでいた。その木陰に潜んでいたのだろう。影に潜むモノは移動するときに別の影に潜む。わたしは何故かよく使われる。そういう質(たち)らしい。


早く降りてくれないか、と思いなるべく影を選んで歩く。身体は一向に軽くならない。

結局、その日は影に潜むモノを連れて歩いた。


身体の重さにも慣れ、気にもとめなくなった一週間後。ふたたびあの木陰で休んだあと、身体が軽くなった。ここが一番居心地がいいってことか。


わたしもこの木陰が好きだ。

また乗られるかもしれないな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る