第79話 聴衆

灯りを消して床に就いたけれど、昼間のことが気になって眠れない。

起き上がり、ああでもないこうでもない、ああなのかしらこうなのかしらと考えているうち、それが声に出ていた。わたしはひとりごとが多い。


気がつくと小さな人たちが大勢、わたしの声に耳を傾けている。親指くらいの背丈の人たちである。どこから来たのか知らないけれど、ということよりも、そもそもこんな小さな人たちがいること自体がわけがわからないけれど、なにやらわたしのひとりごとを熱心に聞いてくれているのでわたしも一所懸命に話す。


話はまとまりのないまま延々とつづき、いつの間にか夜が白々と明けてきた。

仕事に行かなくてはいけない。


行ってきます、とわたしは小さな人たちにいった。いってらっしゃい、と小さな人たちは声をそろえて送ってくれる。


今日はいい天気だ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る