第75話 引き出しのポスト
投函するのをためらい、その手紙は引き出しにしまい込んだ。と、いって捨てる気にもなれない。
気がつけばその手紙が失くなっていた。一人暮らし。誰かが出すはずもない。
あるとき、引き出しに手紙を見つけた。わたしの書いた出さなかった手紙じゃない。全然別の知らない手紙。どうしてこんなものが引き出しにあるのか。
たわむれに、その手紙に返事を書いて引き出しにしまっておいた。
その手紙とわたし書いた返事の手紙。それらが失くなり、また別の手紙が引き出しにはあった。返事への返事かと思って読んでみれば、全然別の知らない手紙。
その手紙にも返事を書いた。この調子なら返事は届かないだろうけど。
わたしは手紙を書く。どこの誰だか見知らぬ人にむけて。
そしてどこの誰だか見知らぬ人からの手紙を読む。何十人、何百人の手紙を読む。
引き出しは想いを呑み込み、そして届けつづけている。
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