第62話 虚と実

喫茶店で小説を読んでくつろいでいる。と、ぎょっとした。近くの席での二人の会話がたった今読んでいるこの小説のなかの二人の会話そのまま。


別の日。相手の受け答えがあらかじめわかっているような気になる。たぶんこう答えると思っていると本当にその通りに答える。それに対し自分はこう返す。やり取りがすでに決まっているかのよう。

あ、そうか。これは最近読んだ小説そのままだ。現実が小説をなぞっている。


明日、懐かしい人にばったり出くわすと思っていると本当にそうなる。

小説で読んだ出来事が現実に起きる頻度が徐々に多くなってきた。


この小説、このまま読みつづけていいものかどうか。


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