第53話 葬式

葬式をしよう、と彼がいった。

「どうしたの?」

「泣きたいんだ、少し」

「勝手に泣けばいいじゃない。葬式じゃなくっても泣けるでしょ?」

「葬式で泣きたいんだよ」

わけがわからない。


「葬式に遺影がいるな」

本当にやる気らしい。

「あなたの写真でもいいじゃない」

「それはいい。おれの葬式をしよう」

大喜びだ。泣きたいんじゃなかったの。


彼は遺影を撮りに出かけた。喪服もいるな、といっていた。こういうのは形が大事だからな、ともいっていた。


そして彼とは連絡が取れなくなった。


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