第16話 助けてくれたのは?

あっ!

つまずいて思わず手が前へ。何かに触れた。反射的に握りしめる。

助かった。転ばずに済んだ。


態勢を整える。

つまった息を大きく吐き出すと、なにか気になった。何に?

ん?! 今、握りしめたのは何だった?

そこには何もない。握りしめられるようなものなんて何もない。けれど確かに握りしめた。だから転ばずに済んだ。感触だって残ってる。


見えないだけ?……でもないか。何かを握ったその場所に手を伸ばしても触れられるものは何もない。本当に何もない。


本当に何もない?

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