303号室

僕には好きな人がいます。

同じクラスの女の子です。

僕はその子と話したことないです。

でも同じマンションに住んでるから、朝でも学校でも、放課後も一緒です。


出会いは2013年4月9日、中学校の入学式が終わったあとの教室でみんなで椅子を円の形にして自己紹介をした。


僕の苗字は熊谷だから「クマくん」って呼んで欲しい。とみんなに伝えた。

あの子の名前は愛らしいあの子にピッタリの名前だった。


「おはよ」

『おはよう』


あの子はテニス部に入っていて、朝早くマンションを出る。

あの子は徒歩で、僕は自転車で。

はやく学校に行ってあの子の朝練を見るのが最近の楽しみ。

僕は部活には入ってないから、放課後も教室からあの子を見てる。


『おはよー、朝練疲れたー』

「おつかれ、今日も大変そうだったね」

『ありがと、ソフト部も大変そうだったじゃん』

「朝からめっちゃ投げてきた」


あの子は誰とでも仲がいい。

僕とも仲良くしてくれる。


『あ、尚』

「ん?」

『今日も夜練習するから手伝って』

「いいよ、ご飯食べてく?」

『うん』


彼はあの子の隣に住んでる幼なじみの尚君。

毎日マンション前の広場で夜に2人でテニスの練習をしている。

尚君は野球部で、あの子も昔野球をやってたからか、尚君の練習にも付き合ってる。



夜9時になると町内に知らない音楽が響く。

そしたら2人が広場に出てくる。

あの子の試合が近いらしくて、今日もテニスの練習。


『夏休み前には居なくなる』

「元気でなー」

『暇があったら帰ってくる』


僕、そんな話知らない。

あの子が遠くに行くなんて、聞いてない。


「テニス続ける?」

『それはない』

「やっぱ体しんどいか」

『うん、今無理しなくてもいいかなーって』

「連絡待ってる」

『うん』


あの子と尚君が解散した後、あの子が広場に戻ってきた。

鍵を広場に忘れたみたい。


あの子は帰る時にエレベーターを使う。


「乗る?」

『大丈夫』


あの子はエレベーターには乗らずに大回りして階段を使って帰って行った。












3階のボタン押したのに。

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