一生君のファン

私には好きなアイドルがいる。

3人組のアイドルで、地下アイドルだけど、その子は界隈の中では天使のような可愛さと悪魔のような中毒性を持つアイドルだ。


『あ、今日も来てくださったんですね!』

「もちろん!ステージに立つ時は絶対見に来るって約束したでしょ?」

『ありがとうございます!あの、お願いごとがあるんですけど…』

「ん?」

『そろそろ、名前…呼んでくれませんか?』

「…」


少し潤んだ瞳、赤くなった頬、首を傾げる姿は子猫のよう。


「…」

『だめ、ですか?』

「よ、呼ぶ!呼んじゃう!!」

『えへへ、じゃあ私の名前はなんですか?』

「もえちゃん」

『もえ、って呼んでください』

「もえ…」

『はーい!もえ、大満足です!』


この笑顔がどれだけ沢山のファンのハートを射止めただろうか。


「お時間でーす」


この時が永遠に続いて欲しかったのに。

と思い、大好きなあの子に別れを告げて帰路に着く。


あれから3週間、あの子の卒業ライブがあるという情報を入手した。 


『みんな、今までありがとうございました。ここでの思い出は一生の宝物です』


あの子と目が合った気がした。 


『私を推してくれて、ありがとう』

「こちらこそ、ありがとう。一生もえのファンだよ」

『うれしい』


「お時間です」


今日はいつもより短い気がした。

楽しいことほどはやく時間が過ぎるもの。



『あーあ、もう終わりか』

『もえちゃんもうバイバイなんだね』

『一緒にいられて楽しかったよ、もえ』


『じゃあね』


スタジオを出て、駅へ向かう。

もう一般人、ツインテールの髪は下ろして、学校の制服を着て。


それでも天使のように可愛い。


「もえ」

『えっ』

「一生君のファンでいるって言ったじゃん」




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