キャラクターに突撃インタビュー

紅灯空呼

脇役

『朝昼夕のカリーなる教へ』に付随する話(ハヤシ)

第1話【ジョン】

 本日はご多忙の中、このマーズ放送協会アウストラレ高原スタジオに、大勢の皆さまが、お足をお運び下さいまして、まことにアリガトウございます。

 ここで今から行われますのは、カクヨムさんで投稿されていますWEB小説、『朝昼夕のカリーなる教へ』に付随する話(ハヤシ)に出演されておられるキャラクターさんに突撃インタビューをする様子の生映像を、こちらのスタジオにお集り下さっている皆さま方と一緒になって、ぞんぶんに心行くまで楽しみましょうと云う趣旨の公開生放送番組です。

 今回インタビューをする予定になっていますキャラクターさんのおられる現場へ向かっているのは、マーズ放送協会の新星アナウンサー、玄馬幾子げんばいくこです。

 ええっと、そろそろ到着する頃でしょうかねえ。ちょっと呼びかけてみましょう。


「現場にいる玄馬さーん!」

『……』

「玄馬幾子さぁ――ん!」

『……』


 えっと、まだちょっと音声が入ってきませんね。「えっ、ここで?」

 あ、失礼しました。いったんここでコマーシャルです。


【二分三十秒間、スポンサーによるCM映像が流される】


 はい、えー、ようやく現場の玄馬さんとつながったようです。呼んでみましょう。


「玄馬さぁん?」

『……はぁ、え、お弁当? あ、じゃあ鮭弁で』

「玄馬さーん! 聞こえますかぁー!」

『えっ、ああっはい、ハイハーイ! 聞こえてますよ~』


 あ、聞こえたようですね。

(ふぅ~、危うく放送事故になるところだったぜ。なにが鮭弁だよ、まったくぅ)


「えー、玄馬さん、今はどちらにいますか?」

『はい。わたしは今、ドアヌス渓谷の近くまできています』

「ええっ、そんなところにですか!?」

『はーい! 今日インタビューをさせて頂くことになっている、アクション俳優のジョンさんが、こちらでロケ中なんですよ~』

「ああ、そうですか。はいはい、それでドアヌス渓谷へ行かれているのですね?」

『ハイハーイ、そうなんですぅ~』

「そうですか。それでは早速インタビューのほう、お願いします」

『はぁい、わっかりましたぁ~』


【画面内容が切り替わって、ドアヌス渓谷の近くにあるロケ地が映る】


「こんにちは、ジョンさん!」

「おう、きたか。待ってたぜ」

「では早速、お約束していましたインタビュー、準備よろしいでしょうか?」

「だから、準備できて待ってたんだよ!」

「はいスミマセンでした。では始めます、最初の質問。お名前は?」

「ジョンだよ! あんたさっき俺のことを、そう呼んだだろ?」

「はいスミマセン。えっと、でもインタビュー形式ですので、ご協力お願いします」

「判ったよ。もう一回やってくれ」

「はいスミマセン。では改めまして、お名前は?」

「ジョンだ」

「ファーストネームは?」

「レモンだ」

「ジョン・レモンさんですね?」

「そうだ」

「あの、怒ってらっしゃいます?」

「怒ってねえよ!」

「いやあ、でもいつも朗らかなジョンさんの雰囲気と、かなり違ってて……」

「俺今回やってる役が暴れ犬なんだよ。それで役作りつうか、なんつうか、もうペキカンに入っているんだよ、スイッチが」

「あっはあ、はいはい。そう云うことですね。判りました。では気にしないことにして続けさせてもらいます」

「おう」

「二つ目の質問。年齢は?」

「三歳と五か月だ」

「えええっ、意外とお若いのですね?」

「まあ犬だからな。だが、これでも成犬だぜ」

「ああそうでした。ジョンさんは犬でした。はい、では三つ目の質問。種族は?」

「だから犬なんだよ!」

「はいええ、はいそうですね。次の質問。出身地は?」

火星マーズだ」

「えっと、もう少し詳しく」

「ラベアティス連鎖クレーターだ」

「ああああ、あの景色の美しい地方ですね?」

「違うって! なにもねえとこなんだ!」

「あっ、かんちがいでした。次の質問にうつります。髪の色と目の色は?」

「髪つうか、体毛は薄茶色だ。目はあんたの好きな色で染めてくれ」

「へ??」

「だから俺の瞳の色を、あんた色に染めてくれってことだよ!」

「あ、はいはい。えっと、じゃあ見た目通り、燃えるような赤い瞳ですね」

「ちっ、まんまかよ!」

「では、外見の特徴は?」

「犬だ」

「あの、もう少し詳しく」

「青いパンツ一丁姿の犬だ」

「ご職業は?」

「アクション俳優だ」

「学歴は?」

「ねえよ」

「え?」

「ねえんだよ、一個も。それ以上は聞くな」

「あ、はい。無学歴と云うことです。では、家族構成は?」

「独身だ」

「ご両親は?」

「知らねえ」

「はい。では次、性格の特徴は?」

「まあ気分屋だな。そのときによって変わるんだ」

「あー、よく判ります。それでは、好きなものは?」

「カリーだ」

「えっと、辛口ですか?」

「いやあ、甘口だ」

「特技は?」

「ジョン・スペシャルだ」

「どんな技ですか?」

「俺はHPが20で、すげえ弱いんだけど、MPが5万8千あるんだ。それのほとんどを使って、その辺に落ちている石コロを拾って敵に投げるんだ」

「えっと、それは必殺技ですか?」

「まあ相手がラスボスでもHPが20パー未満の場合、当てりゃ0にできる」

「命中率は?」

「5パーくらいだ」

「あまり役に立たないのでは?」

「まあなあ。だから特別なんだ」

「ああそれで、ジョン・スペシャルと云うネーミングなのですね?」

「おう」

「嫌いなものは?」

「ない」

「苦手なものは?」

「苦手つうか、恐いのは俺自身の才能だ」

「好きな食べものと嫌いな食べものは?」

「おいおい、俺のクールな回答はスルーかよ?」

「ええ、ちょっと時間が押していますので、ご協力お願いします」

「判ったよ。好きな食べもんはカリーで、嫌いな食べもんはねえ。つうか、これさっき答えただろ? 時間ないなら、重複する質問は省けよ!」

「好きな色と嫌いな色は?」

「またスルーかよ! ええわもお。つうか赤が好きで、赤紫が嫌いだ!」

「犬的に好きなのはどんな犬?」

「俺みたいにクールな犬だ」

「苦手なのはどんな犬?」

「俺みたいに才能のある犬だ」

「恋人にするならどんな人?」

「あんたみたいな若くてカワイイ女だ」

「一番の友達は誰でしょうか? またどんな人でしょうか?」

「やっぱりスルーかよ! ああ、ええわもお! つうか友達いねえんだよ。あえて云うなら、俺自身が俺の一番の友達だ、くそお」

「ボッチですね。なんでも願いが叶うとすれば、どうしますか?」

「まあ俺は脇役一筋だがよお、ぶっちゃけ一回くらいならマーズ放送協会の大河ドラマで、主演の坂本竜馬を受けてもええぜよ」

「生まれ変わるなら、どうなりたいですか?」

「ちっ、くそ!」

「生まれ変わるなら?」

「坂本竜馬だよ!」

「どんな死に際に憧れますか?」

「志なかばで幕府の犬に斬られる、みたいな壮絶な死に際とかぜよ」

「最後に一言お願いします。登場作品の宣伝をしてもいいですよ!」

「俺が出てくるWEB小説、『朝昼夕のカリーなる教へ』に付随する話(ハヤシ)を読んでくれ。ごっつう、イカしてるぜよ」

「どーもアリガトウございましたぁ!」

「お、おう。あーそれより、俺と晩メシどうよ?」

「今回の突撃レポートはジョンさんでした。スタジオにお返ししますね~」


【マーズ放送協会アウストラレ高原スタジオ内が映る】

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