第76話 『絶体絶命ツァデス』
「はぁッ……はぁッ!!」
上半身に機械的な部分が見えるスーツに髑髏の様なガスマスクを装着する栗髪を二つにして垂らす女性。
獅子吼家特注品狩衣『
彼女の周囲には、多くの化物が蠢いている。
どれもこれも、皆デザインを合わせたかの様に、銀色に輝く鋼の様な甲殻に身を包んだ化物であり、そのフォルムは原始的な海洋生物や陸上生物の真似事ではあるが、その肉体速度は常人の数倍以上の肉体でありながら狩人よりも早く、一度攻撃に転じれば回避と防御が間に合わぬ位の能力を発揮する。
「ネコッ!」
獅子吼吏世がそう叫ぶ。
その声に反応するかの様に、全身筋肉繊維で包まれた狩衣『
『キリがねぇぜッ!化物多すぎだッ!』
全身装着型スーツである為に声が男でも女にも聞こえる様なモザイクの掛かった声が響く。
根古屋はゴリラの様な、両腕が肥大化した化物の首を掴んでチョークスリーパーを掛けていて、膂力に関する筋肉を助長、肥大化する上腕二頭筋及び前腕部分。
ぎちぎちと銀鋼の甲殻の隙間から茶色い筋肉繊維が異常なまでに伸張し断裂を引き起こして黒い体液が噴出する。
『ブチ、切って、やらぁあ!!』
ぶちりと音を鳴らして黒い体液の他に青白い光が火花の様に散りながら頭部が捥げる。それを嬉々として笑う根古屋新愛だったが、首を引き千切った筈の化物の腕が肩に乗る根古屋新愛に向けて拳を繰り広げ、無造作にもその一撃を喰らう。
『がッ!』
殴られた勢いでそのまま森林地帯の木々に衝突する根古屋新愛。
振りむくと、友人である狩人の名を叫ぶ。
「ネコっ!」
こんな状況下。
獅子吼吏世はどうしてこうなってしまったのかを考える。
彼女たちは島へと向かう船に乗っていた最中。
唐突に、船が打ち上げられた。
深海を泳ぐ化物が、船を水面から叩き付けて、飢餓島の森林地帯へと飛ばしたのだ。
そして運悪くその地点は化物が多く生息していて、彼女たちは今、強制的に戦闘を開始していたのだった。
「(もう、撤退しかないわッ……ワン丸が見当たらない、残念だけど、離脱が優先)」
盾型狩猟奇具である『咆髏』を使って逃げ道を作るが、化物の群れはそう簡単に崩す事は出来ない。
「(あぁ……なんて絶望的……このまま、私たちは此処で……)」
死を考えた、それは嫌だと首を振って歯を食い縛る。
「(まだ、駄目……彼に、十世にあうまでは……)」
死ねない。
死んでたまるか。
その様な意気込みを持って、化物たちに挑んだ。
その時だった。
複数のグループの内、その二つが別のグループと出会った。
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