配信者なんて

夏目柚

高校生配信者の日常

「りんご飴さんいらったい。ゆっくりしてってね♪ 今日さ、学校の帰りに・・・」

 ライブ配信アプリ。

「・・・初見さんかな? 自己紹介します。年齢17歳の高校2年生。性別は女の子。よくまったり雑談放送や企画などをやってます。沢山コメントを読むので一緒にお話しようね♪」

 私は高校2年生、友達の勧めで「Snowスノー」とういう配信アプリに絶賛ハマリ中です。顔出し無しの、ラジオ配信アプリ。

「あ、レオくん! いらったい♪ なんで配信してすぐ来てくれないの~、もう20分たってるよぉ?」

 普段しゃべる声よりも高くなし、語尾はなんとなく伸びてしまう。

 私が利用しているアプリは1時間配信ができる。その間に入室が約10人ほど来る。リアルタイムの閲覧は5人程度。皆常連さん。初めて枠にくる「初見」さんを確保するため、入室の合図があるとともに、知らない誰かに話しかける。

「・・・でも最近、初見さん少ないし、なんかなぁ・・・伸び悩んでるんだ!」

 こんな事を言うとすぐ常連さんが投げアイテムを投げてくれる。

「わぁ! 30スノーありがと♡ その雪を集めて、雪だるま一緒につくろ♪ スノーせんきゅっ♪」

 1スノー、100円。3000円投げてくれた。

 少し弱気な発言や困りごとを言うと、常連さんが「投げ銭」をしてくれる。

「これで、タピオカ買っちゃお♪」

 絶対リアルではタピオカなんて買わない。まず田舎なのでタピオカなどない。コメントに「いっぱい飲め飲め」「かわいい」「今時タピオカとか飲む人いなくない?」などと流れる。画面の中だけでも、可愛いを意識している。

「・・・今日も配信聞いてくれてありがと♪ またね♪ 次枠はありませーん!」

 配信を終え、LINOリノのメッセージの通知が来ているので確認すると『おつかれ! これから通話しよー』レオ君から連絡が入っていた。レオ君は配信アプリで仲良くなった社会人。自撮りも交換して、マッシュヘアーで切れ目で年上だしとてもタイプ。声もイケボ。

「お疲れ配信」

「疲れたよ」

「ファン数伸びたよな、人気ものじゃん」

「そうかな? レオ君なんて大手じゃん。ファン数千越えてるし」

「でも俺、ファン数増えても、お前ぐらいしか連絡とってないしな」

「え? ほんとかな?」

 顔も知らない誰かと今日も朝まで通話をする。

「・・・そろそろ会いたいじゃん。毎日連絡してるし」


 今度、リアルで会おうと言われている。少し怖いけど、会おうか会わないか。

 悩んでいる。

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