不愉快創作
黒胡麻月介
第1話 自動販売機
近所に山がある。
引っ越してきてから漠然と「あるなあ」と思っていたが、特に行くこともなく数年住んでいる。
休日、天気がいいのでその山に登ってみることにした。
ネット標高なんかを調べる限り、そこまで気負わずに行けてハイキングコースなんかもあるらしい。
簡単に装備を整えてから登山に向かった。簡単に舗装された道への入口に、「こちら ハイキングコース」と矢印のついた木の看板が立っている。
しばらく杭とロープ沿いに進むと、「遊歩道」と書かれた看板が立っていた。さっきのものより古く見える。なるほど、昔は遊歩道と呼ばれていたんだなと思いつつ更に進む。
山らしく、生き物の気配はあちこちからするが姿は見えない。どのくらいの生き物まで居るんだろうか。鳥は居るだろう、鹿はどうかな。猪なんかは流石に居ないだろうか。
しばらく歩き続けていると、道の真ん中に青色の自動販売機があった。山の中に?と思う。親切にゴミ箱も併設されていて、「山をきれいにしましょう」とラミネートされた張り紙が貼られていた。やはり山だよな。と思う。そこそこ売れているらしく、2つあるゴミ入れの穴のうち片方から、空のペットボトルが突き出していた。
自動販売機のラインナップを見直す。なんとなく見た事のないものが多いような気がする。しかし街中の自動販売機なんてそうじっくり見ることは無いから、山を下りてもよく見るようなものしか案外無いのかもしれない。
カラン、と小銭入れの所から音がした。探るとコインの感触があった。出して見ると、見た事ないゲームセンターのコインだった。
薄気味が悪くなって、コインを戻し、何も買わずに自動販売機を後にして来た道を引き返した。
家に帰ってから、そういえば電源ケーブルを見てみればよかったな。と思った。
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