第144話 トランスジェンダー ①

本当にいい陽気だったんだ。

そいつが、酒臭い突風を耳の奥に吹きつけて、銅鑼を叩く迄。


あんちゃん。おめえ…女、だろ」


曇天に、そいつはチロリと舌先を出し、顎をしゃくった。


「又、頼まぁ」


天変地異の後は、イシシと下卑た笑い声が散らかって…くそっ!


…まぁ、いいか。

どうせ、この肉体世界は俺んじゃない。




★☆★


竹次郎(本名:たけ)


「男装をして雇われる事は道義に外れ」たんですって。

窃盗、恐喝、身分査証の罪に加え、「再三禁止した男装を改め無かった」ので、『人倫を乱す者』として、八丈島に流されました。


彼女がトランスジェンダーであったかどうかは定かではないけれど…。

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