第41話 ”レッドスコーピオン”ギルドマスター

今日は珍しく私達のギルドにお客さんがやって来ていた。

黒髪ロングの可愛らしい服装の可愛らしい女の子―――と、容姿はこんなかんじだが…実の所彼女は”あるしゅ”危険な存在とされていた。

と言うのも―――


「やぁやぁ! いらっしゃ~い! 優香ちゃん! ささっ! そこに座って座って!」

「あ…今日はちゃんと服着てる。 というか、レイナさん? もうその喋り方のままなんですか? なんか胡散臭いんですけど」

「うるさいぁ~! 本来はこういう喋り方なの!! 何か文句あるかぁ~い?」

「いえ、ないですよ…」


等とはいっているが、正直…私本来の話し方としてはこれが正常なわけで…あれはあれで女神による副作用と言うかなんというのか。


「はぁ…まぁ、多少なりとも変わった事は事実だよねぇ~。 それも君のお兄さんのお陰かな? ねぇ! カイネちゃん!」

「っ///」


と彼の話を出した途端、茹でタコの様にお顔真っ赤な状態になるカイネちゃん。


「いやぁ~、春がやって来たんですなぁ~! このっこのっ!」

「そう、それ!!」

「「!?」」


隣のカイネちゃんの顔を勢いよく指差した優香ちゃんは何故か納得できないと言う表情でカイネちゃんの顔をまじまじと見つめる。


「な、なんだよっ!///」

「おかしい、実におかしい! 言っときますけどね! お兄ちゃんはほとんど家に籠ってて! カイネさんとは何の接点も、ほとんど何もフラグを経由していない状態です! なのに、何故そんな反応なのか! それを今日は問いただしに来ました!」


ふんっ! と鼻を鳴らした不機嫌な優香ちゃんはソファーにどっしりと構える。

まるで息子の彼女を確認しにきた姑の様だ。


「いや…それはあの…//」


いつもの姿を想像できない位に女の子らしくなってしまったカイネちゃん。

見ていて楽しい事この上ない話なのだが、これ以上彼女を怒らせると何をしでかすか解らない。

ので私は彼女の代わりに口を開いた。


「優香ちゃんはさぁ~? ダークエルフって存在がどんな存在か知っている~?」

「知りません! そもそもエルフ感ないですよね? カイネさんは」

「まぁ、今回の話はそれと! ”狂戦士”のハーフって事が原因なんだよねぇ

ぇ~」

「うっ…//」

「へぇ~?」


そこで私は彼女の目の前のソファーに腰を下ろし話を続けた。


「ダークエルフってのはね。 長寿でありながらも、実は生涯の伴侶を”1人”しか選ばないんだ」

「ひ、一人?」

「そう! だから私達の世界では、ほぼ絶滅種とされていてね? そりゃそうだよね! 浮気以前の問題で、番となった者意外とは絶対に関係を持てない身体にされちゃうんだ。 まぁ、それがダークエルフの呪いってやつなんだけどねぇ~」

「ほ、ほぅ?」


いまいちピンと来ていないのか、首をかしげる優香ちゃん。


「それが何故かって話なんだけどねぇ~? ダークエルフってのは厄介で、そもそも性欲ってものがそりゃもう凄い訳!!」

「は、はぁ…そ、それで?」

「けれどね、番を見つけるまでは異性に一切興味を持たないの!」

「ちょ、ちょっと……」


私の話を聞いてか急に頭を抱え始めた優香ちゃんを見てニヤリと微笑む。


「けどねぇ~? ダークエルフには解っちゃうんだよねぇ~? 身体の相性と子宝に恵まれる”自分と相性”のいい人が!」

「!? ――――そ、それって…人間とかも含まれます…?」

「…ご明察ぅ~! 種族は関係ないんだなぁ~これが! そして、それは生涯”1人”きりしか現れないんだ。 けど、みてぇ~!? もうこんなに火照っちゃってさ! カイネちゃんったらかわうぃ~!!」

「あ、あ、あ、あ、あ…」

「そして、優香ちゃん。 ここからが本番だ…カイネちゃんはね?」

「や、やめろぉレイナ!///」

「お兄ちゃんとズッコン―――ぐぇ!!!」


襲い掛かる頭への衝撃―――それを食らった私は勿論…

滅茶苦茶いい所で目の前は真っ暗になった。



――――――――――――――――――――――――――――――


「はっ!? 滅茶苦茶いい所だったのに!!」


目覚めればそこには見慣れた天井が――


「というか、いきなり女の子の頭を全力って殴るってひどくなぁ~い!? カイネちゃん?」

「お、お、お、お、お前が変な事を言うからだろうが!///」

「え~…よかったねぇ。 って話じゃん!?」


しかし同時にダークエルフはその特性が邪魔をするせいか、約150年という”生涯”を独り身で終える者も少なくはないのだ。

おかげで向こうの世界では、それが仇となり今では絶滅種とされている。


「お、お、お、お、俺がどうしたらいいか解んねぇんだよ!/// なんかこの辺がずっとむずむずするし! あいつの顔を見てると―――」

「食べたくなっちゃう~?」

「…っ///」


ありゃりゃ、これは相当重症な様だ―――


「で? 言い方からして、それだけじゃないんですよね? 狂戦士――が何たらって…」

「あぁ…あれぇ? それはねぇ…狂戦士は滅茶苦茶性欲が強い!!」

「――え?」


残念なのか、嬉しい事なのかカイネちゃんはダークエルフと狂戦士のハーフである。

だからこそなのだろう、相乗効果によりカイネは既に臨界点を突破した状態と言っても過言ではないだろう。

好きだとか愛してる以前の問題で”番”となる事が決定しており、”獲物”はすぐ近くにいる―――そのせいもあって今の彼女はもはや色々別人。


「つまり…どういう事なのか。 説明をしてあげよぅ…優香ちゃん! これから死ぬ気で創輔くんの貞操を守るんだよぉ~? そう!! 今は私の魔法でなんとか抑えられてるけど―――多分そろそろ限界かも…」


今回優香ちゃんをギルドに呼んだのは他でもない、私こと”レイナ・アーデンベルグ”だ。

私の力を持ってしても、彼女の解放された欲望を抑え続ける事は難しいだろう。


「――――――それって解決方法は…」

「いいかい? ダークエルフと狂戦士ってのはどっちも”淫魔のサキュバス”よりタチが悪いと言われているんだ。 最悪…ベッドの上で殺されるよぉ~?」

「……サキュバスってあの?」

「そう、その…」


試しにパチンと指を鳴らし魔法の効果を解いて見せる。


「フシュ―…フシュ―…フシュ―…」

「うわっ…」

「あははは…流石に未来ある青年をベッドの上で殺害されるのは私もぉ~反対かなぁ~…あははは…」


もう既にカイネちゃんの表情を見て察する優香ちゃんと私はそれから2時間以上に及ぶ作戦会議を開く事にした。 

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