第26話 ダンジョンの仕組み
「にしても…転送用ポータルか、何とも言えねぇ技術だなこりゃ」
次の階層へ向かう”転送用ポータル”の前でそう呟く。
見た目は宙に浮く不気味な紫色の球体であるが、こいつに触れる事でこの様な広大なダンジョンは次なる階層へ降りる事が出来る。
しかし、以前のダンジョンは階段で素直に下の階層へ降りていたせいか…不思議と違和感を感じる。
「確かに、こういう形のダンジョンは毛嫌いされるわな…」
正直言って。 ゴブリンパークの様な素直な構造であれば変に頭と体力を使う事はないだろう。 では、なぜ俺はこうも転送用ポータルに到達するのが早いのか。
これはまぁ、ズルをしていると言っても過言ではない。
次の層へ到着した俺は目の目に表示されたこのエリアの”全体マップ”を確認する。
『スキャン完了。 ポータル位置、及び冒険者の反応を検知…ルート検索中』
そして頭上に浮かぶ傘の様な形をした何かを眺めながら苦笑い。
「何処で使うんだよこれ…なんて思ってはいたが、こてなんてチート?」
名を”自立型索敵ビーコン”、Z曰く元々すべてのアーマーに標準搭載されているオプションらしく。
百キロ先までの建物や生物をスキャニング出来る化け物オプション機能らしい。
ただし、それなりに使用条件が縛られており。
頭上15mでビーコンが停滞出来る場所・建造物や洞窟の中ではない・戦闘モード中ではない。
等、限られた条件があり正直チュートリアル下でも使用する事は一度もなかったオプション機能である。
「なんじゃこりゃ…もうやりたい放題だな」
しかし、その条件を見事クリアするとこのように馬鹿げた事が可能という訳だ。
おまけにこういうダンジョンのいけ好かないポイントとしては日付事にダンジョンの形や、ポータルの位置…そしてモンスターの生息位置までもランダムで生成されることだろう。
故に、時間が掛かる事で毛嫌いされていると聞く。
が――――
「丸見えか」
『ただし、ビーコンの耐久値は極めて低い設計となっています。 なので、連続の使用は控えた方がよろしいかと』
「だよな…鉢合わせた事はないが、飛行型のモンスター相手にはすこし荷が重いか」
どれだけ万能なビーコンであれど弱点はある。
それは耐久性―――なんでもそのへんの石ころ一つで破壊されてしまうというではないか。
石ころひとつでダウンさ~…なんて事も言ってみたかったがやめておいた。
「で? 24時間使用は制限されるんだっけ?」
『はい。以後、24時間の使用制限が掛かります』
「なるほど。 大事に使わないとな」
ビーコンの使用を終え、優雅に地上へ落ちて来るビーコンを見て思う事がある。
そりゃ、こんだけ落ちてくるのが遅ければ”破壊”されるよなと。
ダンジョンは主に”探索型”と”攻略型”の二つに分かれる様だ。
今俺が居るこのダンジョンは探索型。
文字通り広大なフィールドが広がっており、至る所にモンスターが散りばめられ”探索”を主とするダンジョンの事を言う。
そして以前のゴブリンパークは、密閉されダンジョンの構造に変化は無く”攻略”を主とするダンジョンの事をいう。
どちらにもメリットデメリットが存在し、探索型のメリットはモンスターの密集が少なくアイテムや素材の入手が豊富。
デメリットとしては広大なフィールド故に、探索に時間が掛かってしまう事とレベルアップへの効率は良くない事だ。
反対に攻略型はモンスターが密集しており、ルートが複雑ではなくレベルアップへの効率を求められる。
しかし、難度が高く…モンスター以外の素材の入手は不可―――おまけにモンスター”の再リスポーン時間が早くリスクが大きい。
とまぁ、この様に大きく2つのダンジョンの形に別けられる。
「どっちもどっちだな」
現状、どちらがいいかと聞かれても正直比べようがないのは確かな事である。
前回の様に”無謀”な攻略を目指すよりも、こういった場所でのんびり成長という選択もあるんだろう…が…
「こうも音が響く様な場所だと後々…厳しいだろうな」
火器の銃撃音がとにかく響く…そうはいっても洞窟でも同様に同じ現象が起こっていた。
だからといってだ。 こうも森や洞窟に相性が悪い武器ばかり―――なんて事があるのだろうか!?
長くなったアックスはリーチや破壊力は増したもの、振り回すにはある程度の広さが必要となってくる。
かと言えば、アサルトマシンガン改は多少マシになったとはいえ凄まじい銃撃音が鳴り響く。
そのせいで要らぬモンスターの気を引く事もそれなりにあった。
「ダンジョン向いてねぇ…」
そのくせ、このアーマー…冒険者達が使う装備は何も”使えない”ときた。
以前優香に冒険者用の剣を借りた事もあったが、このアーマは装備しようとすれば磁石のS極とN極の様に反発し拒絶する。
まるで冒険者を嫌っている様な振舞だ。
「ますます解らん」
等は深まるばかりである。
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