第25話 最弱スライムが天敵

ズガン、ズガン!!


『対象クリア、反応はありません』


Fランクダンジョン”始まりの森”へやって来た俺は目を疑った。

ダンジョンのゲートを抜けた先は広大な森林が広がっており、ここ数時間程歩いて移動をしてるが…途方もない広さに思わず嫌気がさす。


「全然っレベル上がらないのな?」

『仕方がない事かと、以前のゴブリンパークはFランク最上位のダンジョンだと聞きます。 今回は前回と違い、Fランク初期のダンジョンですよ?』

「…だよな」


ここ数時間程の狩猟を行ったが、一向にアーマーのレベルが上がる様子もない。

と言うよりも、以前のゴブリンパークが異常だったのか…モンスター達も俺を見てすぐに攻撃してこようとはしなかった。


「あいつらめ…嵌めやがったな!?」


俺は今頃家でのんびりくつろいでいるであろう3人の顔を想像した。

家族の言い訳はこうだ。


『いや、ダンジョンの厳しさってのを知ってもらおうと思って』


優香。


『ほ、ほら!! 虎は子を崖から落とすっていうだろう? ちゃんとした意識を―――すまん』


親父。


『だ、だって! ダンジョンが簡単だ! なんて慢心されちゃこまるでしょう!? だから私達は―――』


母さん。

等という言い訳を俺に散々していたが、感謝している部分もある。


「確かに、これじゃ…慢心するわな」

『はい』


あまりに手応えが無さすぎる、銃弾は愚か―――むしろ相手に近付いてアックスで殴った方が早い位だ。

こんなものを前回に経験していれば、調子に乗っていたのは明白。


とは言え―――


「あんなにギリギリな事させるかね!?」

『『『すぐに帰って来ると思った』』』


今ならあの言葉の意味が痛いほど理解できる。


「はぁ…だったら”あいつら”って相当馬鹿なのかやばい奴ら?」


だからこそ、尚の事…初ダンジョン侵入だとか言ってたあのパーティーは何者だったのだと気になって仕方ない。


「まぁいいか、それに―――」


問題はそれだけじゃない。


『メッセージ受信』

『おはよう。 創輔、今日は始まりの森へ行くんでしょう? 大丈夫だと思うけど、気を付けてね』

「………」


ありがとう。 とだけ送信しておく。

変った。 と言うべきなのか、遠慮が無くなったというべきなのか…”以前”と全く同じ態度で接してくる真奈にはもはや頭を抱えるレベル。

どれだけ冷たくあしらっても”以前”の様に引く事は無くなった。


むしろこれは…


「ぐいぐい来る…」

『ご愁傷様です』

「はぁ…」


おまけにやる事は山積みだ。

俺の相対するモンスター”スライム”という奴に関しては銃弾がほぼ意味を成さない。

ダメージを受けている様子は見受けられないが、こいつがすばしっこいのなんので邪魔なのだ。


『…フルフル…』

『前方にスライムの反応を検知。 迎撃しますか?』

「ほっとけ。 こっちから何もしなけりゃ、攻撃してこねぇし」


このスライム、真横を素通りしてもなんてもないくせに攻撃すれば最後―――自分の命が力尽きるまで追いかけて来る。


「普通、モンスターってのは核みたいなもんがあるんじゃないかのか?」

『残念ですが、スライムに関しては”例外”です。 魔法による攻撃でなければ、核を出現させる事はほぼ皆無かと』

「なにそれ、積んでるじゃん」


思いもよらなかった、まさかモンスター最弱と呼ばれたスタイムが俺にとっての”天敵”ともなろうとは。


「今後スライム系のモンスターは避けた方がいいな」

『そうですね』


なんせスライムに関しては全くと言っていいほどにうまみが無いあ。


1.銃弾による攻撃はダメージを与える事が出来ない

2.アックスの質量で相手を叩き潰すと木っ端みじんに砕け散る

3.グレネード弾はそれよりも最悪


と、”倒す”目的だけであればなんの問題はない。

が…素材等”利益”面を優先すると…なんのうまみもない訳で。


「極め付けは経験値0!!! ちくしょう!!」


Zの情報によればスライムを倒したころでアーマーに入る蓄積経験値はゼロだという。

素材もなければ、経験値もない、おまけにこっちは消耗するだけ。


「なんのうまみもねぇなぁ! おい!! このアーマーはスライムにでも親を殺されたのか!?」


しかも!! しかも、このダンジョンのほとんどはスライムばかり…~スライムだったり色違いのスライムだったり…なんか固そうなスライムだったり。


「ちくしょう!!!」


だからこそ俺は決めたのだ。

このクソダンジョンは今日で最下層まで攻略してしまおうと。



―――――――――――――――――――――


がこんっ!! がこんっ!! がこんっ! がこんっ!!


ひたすらに全速力で下の階層への階段を見つけると奥へ奥へと進んでいく作業。

勿論、それなりにうまみのありそうな奴を見つけると狩るが…それでもたかが知れている。


『あの、これはもう攻略というよりも』

「作業だな。 あと何階層だ?」

『このダンジョンは全部で7階層です。 現在は5階層――――残すところ2階層。 もう少しです』

「よし、いくか…全速力!!」

『了解』

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