第21話 エージェント契約
「うっ…カイネちゃん…嫌な予感がする」
「安心しろ。 俺もお前と同じだ」
「「「ぐふふふふふ…」」」
「え、えぇ~…」
不気味に微笑む3人と若干引き気味な俺…そして血の気が引いていくレイナさんとカイネ。
もはや地獄絵図である。
「ではでは、私から―――カイネさん、レイナさん。 私達は”スチールハート”は貴女方レッドスコーピオンとエージェント契約を申し出たいと思います!」
「え、エージェント契約!? それって普通…おまえ、こっちからいう奴だろう!?」
確かに…カイネの言っている事は何も間違っていないと思う。
「まぁまぁ~カイネちゃん。 あなた達がそんな事を言うってことはぁ~もしかしてそれだけの材料があるって事でしょう~?」
「「「勿論」」」
「怖っ……」
「それだけの材料って。 こいつはあのゴブリンパークへ侵入したんだろう? 素材の取引とは言え―――――まさか!?」
「ありえるねぇ~ゴブリンオークに遭遇しちゃったとか?」
「ゴ、ゴ、ゴブリンオーク!? あ、あの!?」
――――――――――――――――――――――――――――
だが、数分後――――二人は目を見開きながらソファーにぐったりする事となった。
「あ、あ、あ、あ…ありえない」
「こんなのぉ~チートじゃん!!」
いきなり声を張るレイナさんと頭を抱え何かをブツブツと言い始めるカイネ。
無理もない、提示されたものがまさかのまさか――――
「ゴブリン…オークキング!? ゴブリンオークは約6万分の1…だが、キングともなれば60万分の1の確率と言っても過言ではない程に希少なんだぞ!? 他とは違って、こいつらに関しては別格だ!! あのうまみのないダンジョンでこいつらを探す事なんてほぼ不可能に近いんだぞ!? そ、それをこうもあっさりと!?」
「で? お答えは~?」
俄然強気な態度のままの優香達。
あのレッドスコーピオンのTOP達の態度から察するに、そうとうやばいモンスターを俺は狩って来てしまったらしい。
「そうか…こいつは異端者。 そもそもモンスターの見分けがレアかどうかなんて判断できないのか…」
「その聞き方はずるくなぁ~い? そんなの決まってるじゃん~レイナちゃん? ”アレ”持ってきて」
「わかった」
「あれれ~? 今日はいい子ちゃんだねぇ~?」
「あのなぁ…伊達に副ギルドマスターじゃねぇんだ。 どうしたらいいかなんて解ってる」
そして不貞腐れながらも奥の部屋へ向かったカイネは、数分後に一枚の書類を取り出してきた。
「3人は知っているだろうが、そこの鉄野郎は知らねぇから説明しとくと。 これは巨大なギルドが他のクラン等とエージェント契約を結ぶ際に使用される特別書類だ。 エージェント契約の内容としては、優先的にモンスターの素材買取は私達”レッドスコーピオン”が行う。 市場価格よりは少し安い売値にはなっちまうが、例えそっちがゴミを持って来たとてしても買い取ってやるぞって契約だ」
「つまりはぁ~”確実に売れる”契約って事だねぇ~」
「なるほど」
母さんの話によれば、素材によっては早めに売る必要があるものも存在しているらしく…期限を逃せば素材の質も落ち買取価格も安くなってしまうらしい。
しかし―――だからといって国の運営する買取専門店はそりゃもう安値で買い叩かれるのだとか。
「こっちとしては、そっちの3人とエージェント契約が結べる…ってだけで大手を振ってもいいんだが――――こっちの後ろ盾も欲しい訳か?」
「勿論。 だって、お兄ちゃんはこんな姿で狩に言ってるんだよ? 敵は多くなる一方…妬みや恨みにその他諸々。 私達の感じた以上の事を味わう事になるかもしれない――――まぁ、本人は」
「そういう感情を向けられる事に慣れてるせいで、その辺は気にしなくてもいいのだろうけど」
「だな」
な、何の話だ?
「そっちはどうでもいいんだけど。 こっちとしては、お兄ちゃんの邪魔を何処かの馬鹿共にしてほしくない訳! なので、その辺もくんで頂けると嬉しいです!! 以上!
「「以上!!」」
「はぁ…解った。 レイナ?」
「はぁ~い。 全然おっけぇ~それでもこっちはたんまりお釣りが出る位だしねぇ~投資と思えば安い安い~」
「いいか、レイナ!? こいつらだぞ、こいつら! うかうかしてたらギルドの有り金全部持っていかれるぞ!」
「だいじょうぶぅ~い。 この素材があれば…あれができちゃうもんねぇ~」
「あ、あれか!?」
等と話込始めたので俺達はキリの良い所でギルドを後にする事になった。
そして―――――
自宅へ戻った俺達は焼肉パーティーに楽しんでいた。
「いや、やっぱりハラミが一番だよな! うまい!!」
「こ、こら! お兄ちゃん! 早速一人で楽しまない! では~! ギルド”レッドスコーピオン”とのエージェント契約を記念して~かんぱーい!!」
「「「「かんぱ~い」」」」
夕食を楽しんだ俺達はその後、デザートのフルーツを楽しみながら再び4人で会話を始めた。
「そういえば。 3人は明日ダンジョンに行くんだろう? 気を付けてな」
「うぃ~! お兄ちゃんはゆっくりゴロゴロしといてね! 夜には帰るとおもうから! いや~まさかまさか、早くても半年後位かな~っと思ったのここまで早いなんて」
「流石は創輔だ! 俺も鼻が高いぞ! あはははは!!」
「これで将来安泰ね。 私達も頑張らなくちゃ! 創輔に負けてられないわよ!」
「「「えいえい、おー!!」」」
だが俺は知らない、この3人がやる気を出した事で何が起こるかという事を。
そして―――明日の昼頃に俺はそれを知る事となるのだ――――
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