第9話 異端の覚醒者
「さて、んじゃま。 あいつらの事だから、なにも事情を話さずこっちに来たんだろう?」
「……えぇ、残念ながら」
「はぁ…それと創輔? 敬語もなしだ」
「わ、解った」
暫くして、この部屋の説明をカイネは始める。
「この施設の名は異端者試験場。 その名の通り”異端の覚醒者”の試験を行う、特別な試験場だ」
「異端の覚醒者?」
「そうだ。 未だ公になっていてない事なんだがな? この世界にはスキル以外の特殊な能力が覚醒する存在が極稀に居る」
「ス、スキル以外の特殊な能力!?」
「そうだ。 例えば、そうだな~俺は剣と魔法やスキルを駆使して戦う事が主だが…中には”異能”言わば、超能力的ものを扱える奴も存在する。 そいつは魔力を消費せずにいくらでも炎を作ったりできるんだぜ?」
「す、すげぇ…そんな奴が」
まさかこの世界に俺と似たような境遇の者がぞろぞろと存在していようとは。
「が、異端者は強力な力を宿す代わりにレベルアップで得られるステータスへの影響が少ない」
「少ない?」
「そうだ。 モンスターを倒せば経験値を得てレベルが上がる…そういう世界でおまえらみたいな連中は強く成れば成程…俺達との能力値に差が空くわけだ」
「な、なるほど」
「まぁ、それは表向きなデメリットで。 おまえたみたいな異端者はほぼメリットしかない…なんせ”女神共”の影響を受けないんだ」
「女神? それって”女神との契約”ってやつですよね?」
俺でも一度は聞いたことがある、”女神との契約”それは俺達の身体に刻まれた力の様なもので。
その影響を受けて冒険者達は―――
1.ダンジョンは1日に一度だけしか侵入できない。
2,ダンジョンでのレベルアップ制限が発生し1日に最大10レベルまで。
3,ダンジョン内の素材は1人最大100個までしか持ち出し出来ない。
等の制約が発生する。
だがカイネの口ぶりからして――――
「まさか…無制限に?」
「そうだ。 縛りが存在しない…だからこそお前達は無限に強くなることが出来る―――――だがな。 時に力に溺れる連中が現れ――――そいつらがこの世界を乱すわけだ」
空気が変わった。 途轍もない威圧感に思わず息をのむ。
「だから、ここはそんな連中を見定める為の場所だ」
「…ごくっ…」
「だから創輔。 俺に”あいつらと同じじゃない”と証明して見せろ…だったら俺が、この俺がお前を冒険者だと認めてやる。 こい、デス・スコルピオ」
ゴゴゴゴゴゴ…
突如何処からともなく、巨大な赤い槍を取り出したカイネは構える。
「安心しろ。 此処には俺とお前の二人だけだ。 さぁ、見せてみろよ? お前の異端の力ってやつをな?」
ピコンッ。
『
「あぁ、勿論だ。 いくぞカイネ…装着!!」
ガガガガガガ!!
同じく何処からともなく現れた鉄の塊が俺の周りを囲むように浮遊する。
「!? おいおいおいおいおい!! 冗談だろ!?」
『システム、装着シークエンスに移行。 アーマー転送――――アイアン試作型』
『―装着―』
ガシュン!!!
『アイアン試作型――動作正常。 システムオールグリーン。 いつでもいけます』
「よし、いく―――」
「待て待て待て!! なんだこれ!? おいおいおいおい!!! 馬鹿かっこいいじゃねぇか!? え!? なんだって!? 装着? こう~装・着!! ってやらなくていいのかよ!? うはぁ!!」
「いや、おい…」
「それになんだこの素材は!? 見たことがねぇ!? すげぇ重量感だ!? これは銃か!? でけぇ!! 1.5mはあるぞ!? うはぁ!! なんだ、この右肩にマウントされた斧は! これで殴るのか!? 殴るんだな!? 相手を粉砕するんだな!?」
「だから…」
「ごほんっ。 済まねぇ…取り乱した」
そして俺の近くへ寄って来たカイネは俺のアーマーを数回槍で小突いた。
コンコン。
「ん~…こりゃ無理だ」
「え?」
「現に”こいつ《デス・スコルピオ》”でそれを小突いても傷一つつかん、となると…お前からその鎧を剥がす為には全力で挑む必要があるって事だ。 ここじゃそれは無理だな…おい。 そのままこっちについてこい! いい場所へ案内してやるよ」
「あ、あぁ?」
俺は言われるがままにカイネの後を付いていくことにした。
ガコンッ、ガコンッ、ガコンッ…
「足音までかっこいいかよ」
「ん?」
「いや」
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