第5話 あれからどれだけ経ったのか
自宅の前へやって来た俺は深く深呼吸を始める。
「すぅ~はぁ…もう一度間違っていないか表札を確認すると俺は再び家の玄関の扉前までやって来ていた」
全く苗字は同じで違う人になってました~とかないよな?
それに、あれからどれだけの期間がたったのかも不明である。
「頼む、出てくれよ」
ピンポーン!
インターホンを押すと俺は暫く様子を見た。
「はーーい! どちら様ですか~? 今出ますね~!」
あぁ、この声は母さんだ。
久しぶりに聞いた母さんの優しい声に俺はグッと熱くなるもの感じた、決して自分ではマザコン等とは思ったことはないが!! しかし、その~母さんのことは好きだ。
ガチャ。
扉を開けた母さんの顔はすこし隈が多くなっていた。
「や、やぁ母さん。 元気してた?」
ちょっと声が上ずった気がするが、そのまま俺は続ける。
「創輔……?」
まるで幻覚を見ている様な反応で俺の元へ近付いて来た母さん。
「なんだよその顔…ちょっとコンビニに行ってただけだろう…酷い隈だ」
「馬鹿っ!!!! どこに行ってたのよっ!!」
「おぶっ!!!」
母さんは大粒の涙を流しながら俺を抱きしめた。
「その…ただいま」
「うあぁぁぁぁ!! 馬鹿っ馬鹿っ馬鹿っ!!!!」
母さんは大きな声でひたすらの泣き続けた、そんな涙につられてか…俺まで泣きそうな勢いだ。
―――――――――――――――――――――――――
「うっ…うぐっ…創輔…本当によかった」
「もう…母さん、いい加減泣き止んでくれよ!」
さっきから母さんはずっとこの調子で泣き続けている。
一向に話が進まず、リビングにてただただ母さんを見つけるだけだ。
「二年よ?」
「へ?」
「二年も貴方!! 行方不明になってたのよ! そりゃこれだけ泣くでしょう! もう死んだと思ったんだから!!」
「に、二年…まじで?」
俺の体感では、あのダンジョン内で過ごした期間で言えば1ヶ月程度の話だ。
そういえば…不思議と腹も減る事は無かったし…眠る事もなか…
「あ…やべ…」
思い出した瞬間、突如眠気に襲われた俺はテーブルの上に倒れたのである。
ゴンッ!!
「創輔っ!? そうすけぇぇぇ!?」
―――――――――――――――――――――――――――――
またある出来事を思い出していた。
それは俺の”妹”の話だ。 実は俺には一つ歳の離れた妹がいる。
しかしそいつは冒険者として優秀な成績を残しており、家に帰って来る事もほとんどない…けれどあいつも俺に何も言うことは無かった。
今思えば、俺のせいで色々と言われていたに違いないのに…な。
そう思えば思うほど、申し訳ない気持ちでいっぱいになって来た。
優秀な妹と無能な俺。
こんな滑稽なことは無い、いつかあいつにも…ちゃんと話を――――
「死んだか…」
冗談交じりにそう告げると、目覚めたらそこはよく見覚えのある天井だった。
「いや、ちゃんと生きてるよ…お兄ちゃん」
「
すっかり大人びた雰囲気になった妹の姿を見つめながら俺はそう尋ねる。
「丸一週間。 死んだ様に眠ってた」
「そうか…」
「もう…心配させないでよ…お母さんなんか毎日泣いてたんだから」
「すまん…」
「あと、私に言う事は?」
「すまん…」
「違うでしょう? もっという事があるんじゃない?」
「ただいま?」
「うん! お帰り、お兄ちゃん!」
優香は涙を貯めながらニコッと俺に微笑み掛けた。
成長した妹の姿を見て俺は…嫌でも実感する事なった、本当に二年と言う月日が流れている事実に。
その日の夜の事であった。
久方ぶりに家族全員で食卓を囲むことになった俺達は互いにこれまでの経緯を話す事となった。
「なんで俺だけ白湯!! なんで皆だけ豚の角煮!? ずるい!!」
「だめでしょう? 一週間も寝てたんだから、暫くは我慢しなさい」
「え~…」
「文句を言うな、創輔。 これはある意味罰みたいなもんだ! 反省しろ! ったく」
助けを求めるように優香の方を見るが、あいつは俺から目をそらした。
あいつ!!
「で? ギルドに所属してた優香がなんでここに?」
「お兄ちゃんがダンジョンゲートに飲み込まれてから、すぐにギルドを辞めて飛んできたの」
「へ?」
期待の新生誕生! とかうたわれていた妹がギルドを辞めた?
そ、それも結構有名なギルドに所属していた筈だろう?
「今ではこうしてるけど、もう酷い有様だったんだから…父さんも母さんも」
「め、面目ない」
「ご、ごめんなさい…」
「けど、私もごめん…お兄ちゃん。 お兄ちゃんを助ける事が出来なかった…」
「どういう意味だよ?」
何故か俺を前にして更に落ち込んだ様子を見せる優香にそう尋ねる。
今にも泣きそうな位の顔だ。
「あのダンジョンにはとんでもない化け物が生息していて。 私の元のギルド…”黄昏の騎士”達でも全く歯が立たなかった。 それどころか…雑魚の一匹も始末できなくてね。 あえなくすぐに…あのダンジョンは閉鎖されたの…だからごめん」
「あ~…あのダンジョンの敵は特殊でな。 専用の兵装しか通用しないんだよな」
「そう―――特殊な兵装しか通用しな――――え?」
「え?」
「ちょ、ちょっと待て!! 創輔! お前、あのダンジョンを脱出して来たんじゃ!?」
「そ、そうよ!! 誰も攻略不可能なエクストリームダンジョンと呼ばれているのよ!?」
驚いた様子の三人は俺の顔をまじまじと見つめた。
そんな訳はない! と言いたげな表情でだ。
「ちょっと待って! もしかすると! お兄ちゃん! このステータスカードに触れてみて?」
「ス、ステータスカード!?」
「うん!」
すると妹は何を思ったのか、懐から一枚のカードを取り出すとそれに俺の掌をかざした。
そして―――――――――
――不死川 創輔―――
レベル1
MP1
攻撃力1
防御力1
魔法攻撃力1
魔法防御力1
素早さ1
運1
スキル なし
――――――――――――
「「「お、恐ろしく よ、弱い…」」」
「よわっ!!!!!!」
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