第65話

「『ズドン』」

 魔物を巨大な剣が貫く。

 貫かれた魔物は光となって消え、魔石を残す。

「デュフフフ。これが某の能力でござるよ」

「……想像以上に強力だな」

 僕は山口氏の能力を見て、心の底からの感想を告げる。

 山口氏が所有しているスキルは単純かつ強力で、強大な力を持った5メートルを軽々しく超える大剣を5本召喚するというもの。

 そして、山口氏が大剣の一つを握り戦い、残った4本がサポートするといった感じだ。

 山口氏は魔力操作技術が異世界人並に高く魔法も使えるため、個人の戦闘能力はかなり高く、大剣を持って戦う山口氏はかなり強い。

 流石オタクというだけあり、魔力の活用法が異世界人よりも遥かに上手い。

 10回戦えば1回くらい桜に勝てるくらいの強さはあるのだ。

 まぁ肥え太ったデブが大剣を振り回しているその姿はかなりインパクトが強いが。

「じゃあ次は僕かな」

 僕は僕達に迫ってくる魔物たちを見定める。

 今、僕と山口氏はお互いの力量を測るのと同時に、迷宮大氾濫の際に出てくる魔物の数を減らすためにダンジョンに潜りに来ているのだ。

「『零天の蒼炎』」

 僕は魔法を発動する。

 迫りくる魔物たちを青白い炎が燃やす。

 だがしかし、その青白い炎は対象を燃やすわけではない。

 この青白い炎は相手を殺させる炎なのだ。

 相手の体温を燃料に燃える青白い炎は対象の熱を奪い続け、一瞬で凍らせる。

 この魔法は炎魔法に憧れたが、熱を上昇させる系統の魔法に愛されず、温度を下げる系統の魔法に愛された男が、無理やり作った魔法だ。

 実用性は皆無に近いが、見た目のかっこよさはかなりのものだ。

 同士たる山口氏にはこれの良さが十二分にわかるであろう。

「デュフフフ。すごいでござるな!これは某にでも出来る魔法でござるか!?」

「いや、どうだろ。この魔法使うの結構難しい魔法だし」

 これは普通に最上位に位置するような魔法なのだ。

 おそらく使えないだろう。

「そうでござるか。残念でござる」

 僕が使うのは厳しいと伝えると山口氏は目に見えて落胆する。

「仕方ないでござる。……同士とともに似たような魔法を開発するでござる」

 ……そこで開発するという発想が出てくるのはすごいよな。

 明日香や桜では出てこない発想だ。

「さて、どんどん魔物を倒していくでござるよ」

「うん。頑張っていこうか」

 僕と山口氏はダンジョン探索を続けた。

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