第64話

「もう!一体政府は何を聞いていたの!」

 僕の隣でテレビを見ていた桜が憤慨している。

「まぁ、仕方ないんじゃないのー。政府にも色々な思惑とか事情があるだろうしー」

 それに対して明日香はそこまで怒っている様子は見られない。

 割と明日香は清濁併せ呑む事ができるのだ。

「まぁだろうね。流石に関東圏から人間全員避難することなんて出来ないだろうしね」

「で、でも!避難しなかったら人が死ぬんだよ!?迷宮大氾濫が起きて!」

「でもそれで日本の経済がおしゃかになるわけにも行かないだろう?関東圏から人がいなくなったときの経済的な打撃はどれほどのものになるか……考えたくもないよ?僕は」

「で、でも!やっぱりおかしいよ!」

「だろうな。でも、仕方ないだろう。関東圏全員の人間に避難するように呼びかけ、避難させるなんてそもそも土台無理な話だ。そんなこと言えば自分の支持率は地に落ちるだろうし、避難させる場所も金もないだろう。そもそも民衆がそう簡単に動くとは思えない。所詮政府が出来るのはここまでだろうよ」

 政府に期待したところで無駄だ。

 色々なしがらみの中でとんでもないような馬鹿が混じった民衆の支持率を獲得しながら動かなきゃいけないんだ。

 派手なことも、大きなこともしにくいだろう。

「そうそう。うちの叔父が政治家で、パパは官僚だったけど、 何も出来ないってボヤいていたよ?」

「「え?」」

 僕と桜が呆然と

 え?こいつの叔父は政治家で、お父さんが官僚なん?

 ……え?こいつ普通にいいとこの娘なの?

「あまりそこに触れないでほしいな。私的には」

「……ん。あ、あぁ。わかった」

 僕は頷く。

 他の家の家庭事情には踏み込むべきではない。

「まぁそういうことだよ。政府なんかに頼るぐらいなら自分たちでなんとかするべきだよ。ほら。学校で習うだろう?リーダーを支えてあげなきゃいけないみたいな感じでさ。結局の所僕達が頑張ればいいんだよ。誰にも被害が出ないように確実かつ圧倒的な力でねじ伏せてあげれば」

「そうそう。私達が頑張ればいいだけの話。私達が頑張れば誰も死ななくていい。私達はもう2度とあんなこと起こさせないようにするために強くなったんだから!」

「そうだよね……そうだよね!うん!頑張ろ!」

「うん!」

 いやー、二人がやる気になってくれてよかったよ。

 まぁさっきは誰にも被害が出ないように確実かつ圧倒的な力でねじ伏せるとか言ったけど、そもそもあの化け物を相手に僕がちゃんと勝てるどうかはちょいと怪しいんだけど。

 レベル上げと装備の準備とか……ちゃんとしておかないとな。

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