第9話

「さてさてどこにいるのやら」

 避難所には沢山の人が集まっていて全然わからない。

 ダンボールとかで区切られて個室のようになっているところが多いせいで余計にわからん。

 声で判別しようにもガヤガヤとうるさくて全然わかんない。

 え、どうしよ。

 ……うーん。もういいかなぁ。

 どうせ一週間経っているわけで、多分死んだと思われているだろうし。

 元々生存報告くらいしかするつもりはなかったし、このまま死んだと思ってもらうほうが……。

 そしてそのまま僕なんか忘れてしまったほうがあの夫婦のためになるんではなかろうか。

 僕がらしくもないことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられる。

「零……零なの、か?」

「あ、父さん」

 僕が後ろを振り返るとお父さんが呆然とした表情で立っていた。

 なんちゅう顔しとんねん。

 いやー、父さんの顔を見るのは久方ぶりやな。懐かしい。

「生きていたのか……よかった」

 父さんが安堵のため息を漏らす。

「よかった。ほんとによかった。もう、だめなんかじゃないかと……」

 安心しすぎたのか倒れ込んでしまう。

「っと、大丈夫?」

「あ、あぁ。すまない」

「それで?母さんもここにいる?」

「あ、あぁ。いるぞ。あ、会うか?」

「うん」

「そうか!」

 父さんが嬉しそうに顔を綻ばせる。

 ……なんか申し訳ないな。

「ここだ」

 父さんが母さんがいるところまで案内してくれる。

 狭いダンボールの部屋の中に入る。

 なんか、ホームレスみたいだな。

 ……ホームレス……メンタリスト……うっ。頭が。

 彼のことは思い出さないほうがいいだろう。

 彼の復帰はいつだろうか。

 まぁもうこんな世界じゃ無理だろうがな。

「なっ!零!無事だったのか!」

 母さんは僕を見るなり喜びの声を上げる。

「うん。母さん。見ての通り元気だよ」

「よかった。……よかった」

「ははは、ごめんね。心配かけて」

「本当だ!心配、したんだぞ。本当に。それで?これからどうするんだ?」

「っ!」

 母さんが僕にそう問いかける。

 父さんが息を飲んだのがわかった。

「さぁ?どうしようかな。ぶらぶら魔物狩りでもするよ」

「……そうか。わ、私たちと一緒に、ていうのは」

「それはない」

 それだけはない。

 僕ははっきりと断言できる。

 僕はあまり関わりたくない。

 関わらないほうがいいのだ。

 お互いのためにも。

「……そうかい。大丈夫なのか?危険とか……」

「大丈夫。安心してよ。僕は悪運も強いから」

 なんだかんだ便利な固有スキルもあるし大丈夫だろう。

「それに、僕は世界最強の勇者様だから」

 僕はそれだけ言い残し、両親の元を離れた。

 さて。

 この後はどうしようか。

 とりあえずお嬢さんの様子でも見ておこうか。

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