落×雷⑥




蓮視点



「やっぱり本当に入れ替わっているんだな」


売店へ寄り病室へと戻る。 その時に蓮から、結局涼風の見た目であり、中身も涼風の彼女に話を振った。 もちろん蓮は未だに涼風のことを心泉だと思い込んでいる。


―――もし入れ替わっていないとしたら、涼風は心泉さんの許可も何もなしに勝手に偽っていることになる。

―――他に考えられるとしたら病室にいる心泉さんが目覚めた直後、俺の隣にいる涼風が連絡を取って話を合わせていたとしたらもう分からない。

―――でも目覚めたのはついさっきで、涼風とは退院後ずっと一緒にいたし心泉さんもクラスメイトと会っていた。

―――だから連絡をする隙なんてなかったはずだ・・・。


「本当に入れ替わってるよ。 でも涼風ちゃんが目覚めたなら早急に対処しないとね」

「・・・あぁ」


―――まぁ、入れ替わっている前提で話を進めた方がいいよな。

―――もし入れ替わりが事実だったら大変なことになる。


蓮と心泉は病室へと戻った。


「買ってきたぞー」

「ありがとっ! 何を買ってきてくれたの?」

「んーと・・・」


買ってきたものを袋ごと渡した。 中を見た瞬間彼女の表情が明るくなる。


「嬉しい! 蓮、やるじゃん。 今無性に焼きプリンが食べたくて」

「え? あぁ、そうなんだ。 一応見舞いということになるし、いいかな?」


その言葉を聞いて蓮は隣にいる彼女を見る。 その様子を見てベッドの上の彼女は言った。


「どうかした?」

「いや。 焼きプリンは心泉さんが食べたいって言って買ったものだから。 涼風はコーヒーゼリーが好きかと思って、買ってきたんだけど・・・」


その蓮の言葉に場の空気が一瞬固まった。


―――俺何かマズいことでも言ったか?


困惑しているとベッドの上にいる彼女は繕うように言う。


「あ! 確かに好物はコーヒーゼリーだけど・・・。 何だろう? 身体が入れ替わって味覚も変わったのかもしれない」

「あぁ、なるほど。 確かにそういうこともあるのかもしれないな」


一応はそれで蓮は納得できたが、何となく病室内が気まずい。 


―――・・・何だか異様に居心地悪い。


それでも蓮はもう二人の入れ替わりをあまり疑ってはいない。 信じる方へかなり傾いていた。


「あ、そうだ。 それで今後のことなんだけどさ」

「ん?」

「もし戻れるなら二人は元に戻った方がいいと思うんだ」

「どうやったら戻れるの?」

「・・・分からない」

「そうだよね。 心泉ちゃんはもっと前に目覚めていたんだよね?」

「うん。 そうだね」

「その間はどうしていたの?」


入れ替わった後の生活の話である。 隣にいる彼女は今日退院したばかりのため、病院外では今のところ問題は起きていない。


「私も今日まで入院していたから。 でも入れ替わった生活を送るのは難しいと思うし、どうしようかなっていう感じなんだよね」

「そっか・・・」


ベッドの上にいる彼女は考えてから言った。


「入れ替わった人生を送るのは無理だと思う。 お父さんやお母さんも変わっちゃうっていうことでしょ? ・・・上手くいくはずないよ」


蓮はその言葉に何となく違和感を覚えた。


―――ん、違和感・・・?

―――いや、何も言っていることはおかしくないか。

―――俺と考えたことは同じだ。


「じゃあどうする? みんなに入れ替わったって話す?」

「その方がいいのかもしれない」


二人で話を進められ蓮は割って入った。


「ちょっと待った。 それより先に戻れる方法を探してみよう。 自分の娘の外見が突然変わったらびっくりするだろ? 今は少しでも元に戻れる可能性を信じた方がいい」

「あぁ、確かに・・・」


三人が話しているとノックと共に病室のドアが開いた。



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