実験集
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石器時代のラノベ
「ウホォー?俺、ドウダ?」
皆が振り返り、愕然とおれをみている。なんてことはない。おれはただ木を削り、弦を張り、鋭く尖らせた枝を発射し、それが運よく一発で獲物の急所に当たった。それだけなんだが?
「オマエ、遠い、エモノ勝手に死んだ」
「倒せない、エモノ遠い」
全く、なんとなくこうなる予感はしていた。この発明は天才的だ。おれが獲物を倒したって事、どうやって説明しようかな。どうせこいつらには理解できなさそうだが、やれやれ。
「オマエ、倒してない」
「ダガ、運いい。時間ある、次のエモノ」
「川沿い、エモノの群れ、いた」
あーはいはい。一回目で上手くいきすぎたな。次は何回か外すとこ見せなきゃな。こいつらにはゆっくり教えてやらなきゃ。
「君、それでエモノ、倒す?」
まさかと思って一瞬混乱したが、これはいい。筋のいいやつもいたもんだ。
「ああ、おれ、倒した、これ。」
「それ、棒チガウ、エモノ、倒せない」
ま、筋の悪いのがほとんどなんですけどね。この世界。
「なぜ死ぬ?エモノ、君どう倒す?」
いいねえ。こいつはしゃべり方が変だし、身体も細くてダメな奴だと思ってたが。なかなか話がいい方向に進んだな。
「これ、弓矢。おれ、飛ばす。エモノ倒れる」
「ユミヤ?オマエ、飛んでない。何もしてなかった。」
「弓矢どう使う?」
いいね。この細いの、意外と使える奴じゃん。いいパスくれたし、いっちょ見せてやりますか・・・
「見ろ」
矢をつがえ、飛ばす。エモノもいないので照準は適当でいい。飛んで、さっきのエモノのときよりずっと離れたところまで行った。
「おれ、エモノ、倒した。弓矢、遠くのエモノ倒す」
納得のいってなかった中でも筋の良い奴が気づき始めた。
「飛ぶ、刺さる、エモノ倒れる?」
「そう」
「オレ、使う。渡せ」
思った通り、一番狩りの上手い奴が出てきた。俺と同じように弓を構え、滅茶苦茶な方向に引っ張り、矢は斜め下に情けなく飛んで弦が奴の腕をひっぱたいた。
「お前、勇者じゃない。弓矢、使えない」
「ユウシャ?オマエ、名前ユウシャ違う」
「勇者、なに?」
「勇者、不思議な力もつヒト、俺、勇者。弓矢飛ばせる」
奴は足元の弓矢を拾ってもう一度つがえた。が、力んでさっきよりもひどい結果に終わる。当たり前だ、まず構造を理解していない。
「やめろ、弓矢、勇者違うヒト、倒す」
これで怖気づいたな。つまりどういう事か?よそ者で何かといいようにされてきた俺は特別な存在になったって事だ!いずれはここの長になってやるぞ。奴は俺が働いた100倍はこきつかってやるぜ!・・・その為に、この弓矢のすごさをもう一度見せたやるとしますか!
「川、行く。俺、遠いエモノ、倒す!」
~その日の夜~
「現代知識で無双ってやつね。君をここに送り込んだ甲斐があったよ。その適度に単純な発明、どこまで君は特別でいられるかな?」
「さて僕、君、勇者思う。弓矢、教える。持て」
いやホント、楽しくなってきたなあ!
続かない
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