第3幕

 夢とは元来、都合の良いものだ。夢によっては空を飛ぶことも出来る。(確か明晰夢と言ったな)それを応用した。 “何か”によって病死した、という夢を見るんだ。ベッドの上で病によって死ぬ。それだけで病死はとりあえずクリアするんだとか。あとは事故死と自殺に気をつければ良い。事故死は地道に見ていくとして、自殺は自ら死ななければ防げる。この話をしているときの彼の目は光り輝いていた。「僕はもうすぐ特別な人間になるんだ。いや、人間なんかはじゃない、神のような存在になれるかもしれない。」そう語っていた時の彼が、今でも目に浮かぶ。筋金入りの厨二病じゃないかと思っただろう?私も当時そう思った。しかし、彼が彼である事が再確認できて、嬉しい気持ちもあったんだ。その当時はね。

 この頃には私たちは無事に大学を卒業していた。(彼に関しては半ば追い出されたような形だが)私は親が営んでいる商業組合で働かせてもらいながら、商売に関するイロハを叩き込まれ、彼はそのまま大学院に進み研究を進めた。そして月に一回は二人で街中のカフェに行き、お互いの近況を報告したり様々な事を議論するのが日課となっていた。彼から研究の進捗状況を聞くたびに笑ったり驚いたり、楽しかったよ。大学院の廊下の天井を無くして吹き抜けにしたり(勿論許可なんざとっていない)、研究室で謎の薬品を煎じたり(勿論許可なんざ以下略)。


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