第4話 入学式

春。


桜が満開のころ


魔法専門学校”ブランチ”では


入学式が行われる。


いや、正確に言うとブランチではない。


学校サイドが借りている


体育館なのだろう。


そこに多数の生徒が立って待機している。


ざっと500人ほどだろう。


ざわついている中、1人の女性が壇上に


妙な光を放つ用紙の束を浮かせながら


すっと突然、現れた。


黒髪のショートヘアの女性はかなり


キレイだが、顔はとても真剣な表情である。


服は白に近い薄水色のワンピース


を着ている。


ざわついた体育館は一瞬にして


静かになる。


彼女が現れるまでは密集した室内は


4月の気候と相まって暑さを感じさせたが、


今は少し肌寒い。




「皆さん。はじめまして。


副校長のユキノです。


まずは入学おめでとう。と


言いたいところですが・・・


”ディスト”」




ユキノ先生が呪文とともに指を鳴らすと


用紙が全生徒の手元へ


2枚ずつ飛んでった。


そこには




【死亡同意書】


魔法専門学校入学にあたって


______はいかなる理由で死亡しても


自己責任であることに同意します。




もう1枚は白紙である。




「よく読んでその同意書に


サインをしなさい。


サインできない者、迷いのあるものは


退学とします。」




この同意書の存在は共通認識だ。


それでも、改めて目にすると


逃げ出すものもいた。




「そろそろいいですかね?


今年は結構残りましたね~


それでは回収します!


”コレクト”」




ユキノ先生がそう唱えると手元の同意書が


一斉に彼女のもとへ集まった。




「さて、”仮入学”おめでとう。」




実はこの時、大半の者は死亡同意書さえ


記入すれば


入学できるとされていた。


しかし、実際は、


①死亡同意書の記入


②実力テストに合格


③正式に入学


という一般的な学校とほぼ同じ流れだった。




おそらくほかの生徒もそう思っただろう。




しかし、現実は甘くなかった。




副校長のユキノ先生は


「実力テストなんて聞いてないと思った者が


大半でしょう。


ただ、テストは昔からあります。


外部にあまり出回らない情報ですからね。


それでは、


今から実力テストの説明をします。」




テストという言葉が大嫌いだった俺は


めちゃくちゃ緊張した。




「実力テストに合格するには、


その白紙を持って、


わが校ブランチの校舎内に


到着するだけ。


どんな方法を使ってもいいわ!


それでは皆さんと学校で会えることを


楽しみにしてるわね!


それでは・・・テストはじめ!」




そうすると、一瞬でユキノ先生は


その場から消えた。


同時に何人かの生徒もその場から


いなくなっていた。

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