最強Sランク冒険者、郵便ギルドへ転職します
みやび
序章
プロローグ1
この世界〖シルヴァース〗には五つのギルドが存在する。
1.冒険者ギルド
冒険者ギルドの主な仕事内容は、魔物や盗賊の討伐・護衛任務となっている。他にも色々な仕事をこなしている、言わばなんでも屋に近い存在だ。
冒険者ギルドに所属している人にはランクが与えられ、上から SS、S、A、B、C、D、E、Fとなっている。
冒険者ギルドに登録する人は、年齢問わずFランクから始めることが決まりだ。
ちなみに各ランクの大体の指標は次のようになっている。
SSランク:国を落とせるほどの力をもつ
Sランク :ドラゴンを倒せる力を持つ
Aランク :Aランクの下級モンスターを倒せる力を持つ
Bランク :Bランクの中級モンスターを倒せる力を持つ
Cランク :ギルドに張り出されている依頼なら大半はこなすことができる
Dランク :D、Fランクの間のモンスターは大体倒せるくらいの力を持つ
Eランク :Fランクモンスターを難なく倒せる力を持つ
Fランク :新人
大体の冒険者がDランク止まりとなっており、Aランクハンターになれば下級貴族くらいの権力を持てるようになる。
Sランクに関しては現在、パーティーが一組、ソロでは一人存在している。SSランクは、ソロでもパーティーでもここ200年現れていない。
2.商業ギルド
商業ギルドの主な仕事内容は、街で商売をする人は必ず登録する必要がある組合のようなものだ。他には特許申請やオークション運営なども行っている。
商業ギルドに登録しているお店にはランクが与えられ、上から
これはそのお店で働いている従業員数や年間売り上げなどで定められている。
3.薬師ギルド
薬師ギルドの主な仕事内容は、街でポーションなどの薬を売っているお店は必ず登録する必要がある組合のようなものだ。他には薬師の育成や派遣、ポーション販売価格の調整なども行っている。
薬師ギルドに登録しているお店にはランクは存在しない。ただ薬師達にはランクが存在している。上から、A、B、Cとなっている
ほとんどの薬師はCランクかBランクで、Aランクはほぼ存在しない。指標としては、高ランクポーション作成ができればAランク、中ランクポーション作成だとBランク、それ以下のポーションだとCランクとなっている。
4.工房ギルド
工房ギルドの主な仕事内容は、街で武器などを作っているお店は必ず登録する必要がある組合のようなものだ。他には鍛冶師の育成や派遣などの仕事紹介も行っている。
工房ギルドにはランクは存在しない。鍛冶師にもランクは存在しないが、ドワーフのお店は質が良いことで有名である。
5.郵便ギルド
郵便ギルドの主な仕事内容は、手紙や贈り物を届けることであり、日本でいう郵便局のような存在だ。
手紙などを送るとき冒険者ギルドにも依頼はできるが、依頼料が高くなったり、届けたふりをする素行の悪いハンターもいるので信頼性がそこまで高くない。
髙い依頼料を払って、高ランク冒険者に依頼を出すこともできるが、そんなことができるのは貴族くらいだ。
それに対してこのギルドでは、依頼料は郵便物の大きさと届ける場所までの距離で変化するがそこまで高くないので平民の周りではとても人気である。
ただ問題点としては、配達員が魔物に襲われ郵便物が届かないことや届くまでに1~2か月は余裕でかかってしまうところだ。
このギルドにもランクは存在しない。
◇◆◇◆◇◆
〖シルヴァース〗に存在する大陸の一つユーラン大陸。
この大陸にあるブランド王国の王都冒険者ギルドはいつもと変わらない騒がしい一日を送っていた。
昼間から酒を飲み宴会をする冒険者もいれば、依頼ボードを眺める冒険者や素材の換金を行う冒険者など、みんな自由に過ごしていた。
そんなとき、一人の男が冒険者ギルドに入ってきた。
身長は180cmほどで、腰まで伸びる美しい銀色の髪に、ミステリアスで色っぽい紫色の瞳、その手には黒剣を握っている。
先ほどと打って変わり、ギルド内は物音一つしないほど静まり返り、唯一聞こえるのは彼が歩く足音だけになった。
彼は受付に向かって歩き、受付嬢の一人に話しかけた。
「依頼の達成報告と素材の換金を行いたいのだが」
「アレクさん! お久しぶりです。依頼のほうは確か、
アレクはアイテムボックスから核を2つ取り出し、受付嬢の左側に座っていた鑑定士に見せた。鑑定士は核を鑑定し、赤竜のものであることを確認して、受付嬢に伝えた。
「アレクさん、ありがとうございます。赤竜二体の討伐無事完了です! ではこちらが依頼達成金の白金貨3枚です。あと素材の換金はいつも通り地下で行っているので、よろしくお願いします」
「あぁ、ありがとう。また良さげな依頼入ったら教えてくれ」
そう受付嬢に伝え、アレクは地下に向かっていった。
アレクが地下に降りるまで、冒険者たちは息をずっと止めているかのごとく静かだった。
それもそのはず、彼の名は〖アレクサンダー・ネストール〗唯一パーティーを組まずにソロでSランクに昇りつめた男である。最もSSランクに近い最強の男と呼ばれ、この大陸では知らないものがいないほど有名であった。性格はとても穏やかで、街の人や受付嬢からは大変人気であったが、冒険者たちはSランクという肩書に敬意を持っているためなかなかコミュニケーションをとれずにいた。
アレクが地下に降り冒険者たちの緊張も少し和らいだのも束の間に、ギルドに入ってきた4人組をみて再度緊張がMAXになるのであった。
彼らはSランクパーティー〖金色の旅団〗のメンバー
金髪頭で腰に黄金色の剣をさしているリーダー〖ヘンリー・アンドル〗、
赤髪頭で筋肉ムキムキで大剣を背負っている戦士〖ブルーノ・ウリヤノフ〗、
とんがり帽子とローブを羽織り杖を持っている魔法士〖ヴィオラ・リーゼロッテ〗、
修道服を着ている回復術士〖ソニア・タルティーニ〗
である。
彼らもおそらく依頼報告に来たのだろう、受付に向かって歩いていると、地下から換金の終わったアレクが戻ってきた。アレクは換金明細書を見るのに集中していたためヘンリー達に気づいていないようで、先にアレクに気づいたヘンリーが話しかけた。
「やぁ! アレク久しぶりだね。調子はどうだい?」
「ん? ヘンリーか。久しぶりだな。調子はぼちぼちだな。」
「その割には換金明細書に釘付けだったようだが。だいぶいい儲けでもでたのかい?」
「いやいや、逆だよ。あまり品質が良くなかったみたいで、思っていたより少なかったよ」
「めずらしいな。お前がしくじるなんて。そんなに厄介な相手だったのか?」
「いいや、相手はただの赤竜だったよ。だが依頼受けたのが1か月ぶりだったから、身体が少し鈍っていたみたいだ。」
「相変わらずだな。普通、ただの赤竜なんて言い方しねぇ~よ。俺らですら4人でなんとか倒せるくらいなのによ。まぁ、いいや。この後俺たち飯行くんだけど、一緒にどうだ?」
「すまん。今日は疲れたからまた今度誘ってくれ」
ヘンリーからの食事の誘いを断ったアレクは、〖金色の旅団〗の他のメンバーにも軽く挨拶をして、ギルドをあとにした。
先ほどまで快晴だった空は、どんよりとした暗い雲が広がっておりポツポツと雨も降りだしていた。
アレクの自宅は王都の大通りから少し離れた、平民街と貴族街の境目付近にこじんまりと建っている2階建ての一軒家だ。ギルドから家までは歩いて20分くらいの距離があったので、アレクは小走りで帰宅した。
丁度自宅が見えてきたあたりで、雨が本降りになってきたので、周りに気を付けながら全力で走った。1分もかからないうちに自宅前に到着し郵便ポストに入っているものをすべて手に持ち、自宅内に入った。
郵便物を一旦玄関の左手にある棚の上に置き、濡れてしまった洋服を全て脱ぎ、タオルで髪を入念に拭き、部屋着に着替え、郵便物を1つ1つ確認した。
すると実家の父からの手紙をみつけ、俺は封筒を破らないように丁寧に封蝋をあけ、手紙を中から取りだし読んだ。
アレクへ
お母さんが危篤状態だ。
手紙をみたらできる限り、早く帰ってきてくれ
父より
俺は手紙の内容を理解することができずに、頭の中が真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます