第78話 甦る闇
「
男の人は紫の炎を私たちに放った。檻に入られたように私と弟二人は炎で囲まれてしまった。上と左右から炎が迫ってくる。
「二人共! 煙を吸っちゃダメだからね! けほっ」
急いで鼻と口を服の裾で塞いだものの、既に少し吸っちゃっていたみたいだ。それに、この煙、なんか。
「ハハハハハッー! もう息苦しいだろう! 毒性の高い気体『ロスド』を模倣してオレが編み出した魔法だぁ! 吸い続ければいずれ肺水腫になり、呼吸不全やショック状態になり、お前らは死ぬ!」
「けほっ、げほっ。はぁ……、それで、か」
咳は止まらないし、息苦しい。だから、どうしても吸い込んでしまう。
「バウッ、ゲボッ、ヴゥー」
「けほっけほっ」
二人共、苦しそうだ。何とか、しなければ。
「ハハハハハ! 面白いなぁ! どう足掻いても死ぬ奴らを見ているのは!」
「死ぬと、けほっ、決まった、わけじゃ。はぁ……、ない、です」
「あぁん? 決まっただろ。煙に耐えても逃げ場がない炎に包まれ死ぬんだよ。お前らは」
「いい、え。だって、けほっこほっ。炎の、中に、はぁっ……。いる、のは、私たち、だけ。ヴァルトさん、は……、外だか、ら」
「ぷっ。ハハハッ、ハハッ!」
「何が、可笑しい、の、ですか」
「だってよー、そのヴァルトが、あの化け物が一番ピンチだってのに。ヴァルトさんがいるから大丈夫? ハハハハハッ! じゃあ、お前が頼りにしているヴァルトさんとやらを見てみろ!」
「え……?」
前を塞いでいた炎が弱まった。そこで、見えたのは。
「はっ……、はっ……、はっ……」
「ヴァルト、さん?」
明らかに呼吸がおかしい、倒れているヴァルトさんだった。
目を見開き、喉を両手で押さえて苦しんでいる。
私、この症状を知っている。
前、宿屋に来てくれた女性のお客さんが、昔の彼氏さんと鉢合わせしてしまい、今のヴァルトさんみたくなっていた。
宿屋を経営するにあたり、色んな人と関わるから、人命救助についてお母さんとお父さんとは学んでいた。
あの時の女性は、昔の彼氏さんに暴力を振るわれていた。だから、もう心が受け付けられないんだろうと、お母さんが言っていた。
そう、今のヴァルトさんと同じ、過呼吸症候群だ。
料理の時も、今も、共通しているのは、炎だ。きっと、これが、ヴァルトさんのトラウマの、ベラータおばあちゃんさんの、亡くなった事に繋がる。
でも、今のヴァルトさんには聞けそうにない。と、なれば。
「ファイクくん!」
食堂に入ってきて、巻き込まれたファイクくんに声をかけた。この子もやっぱり苦しそうだ。
「げほっけほっ、教えて! 君の、ご主人様は、ベラータ、おばあちゃんさんは、どうやって、亡くなったの!?」
「けほっ……、ご主人様、は、ベラータ様、は、魔女狩りに、あったんだ……」
「魔女、狩り?」
「……生きたまま、焼き殺されたんだ!」
−−−−−−
あとがき。
ヴァルトさんの過去について、少しずつわかってきます。シリアス続きますが、甘もありますのでー。
みんなが頑張れるように色々ポチしてくだされー。
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