虚夢
朝月
虚夢
ある雨の降る夜。
僕は公園のブランコに座ってドーナツを食べている。もちろん、そのドーナツはチョコレートや粉砂糖のたっぷりかかったやつだ。でも、何の味もしない。普通に食べたら胸やけをしてしまいそうな程甘いドーナツなのだが、全然味がしない。まるで紙粘土を食べているみたいだ。
僕は、何の味もしないドーナツを二つ、三つと食べる。ドーナツというものの味を感じてみたくて。だけど、どれだけ食べても味を感じる事は決して無い。食べれば食べる程お腹にドーナツが溜まっていって苦しくなるだけ。
何個も何個もドーナツを食べる。「たくさん食べればいつか味がするんじゃないか」そんな淡い期待を抱いて僕は食べる。お腹が苦しくなっても食べ続ける。僕はただ、ドーナツの味が知りたいだけなんだ。
そうやって、無理矢理食べ続けて「あっ、味がする!」と思ったら手に痛みを感じた。見ると僕の手には血が滲んでいる。歯形もついている。
僕は自分の手をかじっていたのだ。
そういうもんだ。
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