恋文

ハナミ

第1話禁忌の想い

私は商品。父の会社を発展させる為の道具。

女は道具。

自由はおいしいの?

お花も、嫌い。

そのまま咲いている自由に咲いている花を、花瓶と言う牢屋に閉じ込めて、自由に浴びていた太陽も雨も、虫も風にも二度と逢えない。人は残酷だ。

私のいる世界は小さい。

家の御屋敷と、勉強を教えて暮れる先生。

私には兄が2人いる。

兄だけが、私を道具じゃない扱いをしてくれる。それだけで感謝しないと。

私は、本が読むのが好き。兄が時々持って来てくれる。小さな冒険に出た気持ちになる。

私の服は、令和だと言うのに着物。

逆らう事は出来ない。

幼い頃より1歩も外に出た事のない私は、生きていけないから。

私は道具。

何度も繰り返されて言われた言葉。

時々庭に遊びに来る、黒猫だけが友達。

朝ごはんの残りの鮭を包んでいた紙から取り出しあげる。

美味しいそうに、食べているのを見るだけでしあわせになる。

私はどんな終焉が待っているのだろう?

兄以外は、名前をよばない。

私は密かにお慕いしている方がいる。

実の兄に心を奪われている。

永遠に叶わない想い。

赦されない思い。

神様生きていてごめんなさい。

それでもお慕い申しているんです。

私の部屋には鏡が無いから、どんな姿を自分がしているのかは、分からない。

どんな姿でも、利用価値があるんだろう。

生きていれば兄に会える。

敦兄様、いつも優しく頭を撫でてくれる。

唯一この家で私に触れてくれる人。

甘いテノールの声で

「幸は可愛いな。綺麗だな。将来の旦那さんは幸せだな。後1年だな。最高に幸せな結婚生活になると、おもうよ」

いつも甘く囁くように。

残酷な言霊を囁く。

意志の強そうな眉

切れ長な瞳

捕まったら、逃げられないような猛禽類のような、敦兄様。

お慕い申しております。

全てを捧げられたら。

この、命も体も。

同じ道具になるなら、敦兄様の道具になりたかった。

一兄様は、明るく朗らかで決して私には近づかない。1年に1度お誕生日の時に、話をしてくれる。金平糖の様に甘いお兄様。

両親は、来ない。

身の回りの事は、お手伝いさんがしてくれる。一言も話さない。

私の世界は黒猫と敦兄様と敦兄様への恋文だけ。じっと見られるだけで、頬が熱くなる。

こんなに好きな、愛している方に出会えた事に、感謝すればいいの?

こんな感情を知らずに、お人形さんの様に嫁げば良かったの?

私は、泣きたくなるのを堪え


敦兄様へ

お仕事どうですか?

幸は、毎日敦兄様の事ばかり考えています。その逞しい腕に抱きしめられたい。

もっとお顔が見たい。

毎日、自分は道具だと言い聞かせて、心を殺す練習をしていますが、敦兄様の事を想い。

まだ、話したい。

傍にいたい。

触れたい。

敦兄様は、不思議な方です。

3年前急に我が家に帰って来られた。

一目見て

心が伊吹をあげました

その瞳を独占したい

狂った妹で、許して下さいませ


誰にも届かない手紙を箱に仕舞う。

自分が狂ってしまわないように。

来年の16歳

私は嫁ぐ

どんな方かもしれない。

せめて、敦兄様に嫌われないように、敦兄様が仕事の駒として使われるように。

私の心も体も敦兄様の物

純血も、叶うなら敦兄様に散らして欲しい。

次はいつ会えるのかしら?

敦兄様は、出張と言っていた。

本当に?

本当は素敵な女性と、会ってるのかも、

胸が抉られるように痛い

敦兄様

早く、幸を抱きしめて。

いつものように、ただいまと。

私は頭の中で何度も、何度も、禁忌を犯している。

敦兄様に、純血を捧げる妄想。

私は呪われた子だ。

こんな、激情知らない。

兄を愛するなんて、異常だ。

神様からの罰で、敦兄様とは違う方と添い遂げなければならないと。

私はきっと醜いから、私の周りには鏡が無いんだろう。

こんなにも、どれだけ思っても、私は敦兄様のお嫁さんには、なれない。

生きる事に意味があるのだろうか?

敦兄様

名前を呼ぶだけで心が暖かくなる。

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恋文 ハナミ @muneta

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