第20話
シャーロットは大きな反応を見せた徹也と治伽に驚きつつも、言葉を返す。
「は、はい。この書庫には入り浸っているので、どこにどのような本があるのかは大体覚えています」
「じ、じゃあ、魔力の有無を確かめる方法が載っている本とか、無属性魔法についての本とかはどこに……」
徹也は真っ先に、その二つに関しての本があるかどうかを聞いた。治伽の情報は昨晩読んだ本である程度情報が集まったが、徹也に関する情報は全く得られていない。
「そ、それならありますけど……。本よりも、私が教えましょうか?」
「い、いいのか!?」
「もちろんです。徹也様のためですから」
シャーロットのその提案は、とても魅力的なものだった。本を読まずに人から教えてもらえるのなら、それが一番いいと徹也が思ったからである。
そんな様子を見ていた治伽は、徹也に続いてシャーロットに質問をした。
「シャーロット?その、光魔法についてはなにか知っているかしら?」
「光魔法、ですか?すいません治伽……。その魔法は【王】の才能を持つ者にしか現れないので、私には教えられません……」
シャーロットは治伽にそう返した。治伽も教えてもらえないというのは分かっていた。それ故に、治伽はシャーロットに本の場所を尋ねる。
「いいのよ。なら、光魔法について書かれている本はないかしら?歴史本は読んだけれど、使い方がよく分からなくて……」
「あ、それならあちらの本棚にありますよ。上から三段目です」
「ありがとうシャーロット。じゃあ、て、徹也君をよろしくね?」
「はい!お任せください!」
治伽はシャーロットにそう言い残し、光魔法の本を探しに行った。治伽が行ってから、シャーロットは徹也に話しかける。
「では、はじめましょうか。まずですけど、私の手を握ってください」
「……え?て、手を……?」
「はい。どうぞ」
徹也は少し動揺しながらも、右手で差し出されたシャーロットの手を握る。だが、シャーロットはそれを見て首を横に振った。
「すいません。言い方が悪かったですね。こう握ってください」
シャーロットはそう言って、徹也の手のひらと自分の手のひらを合わせ、ギュッと握った。それをされた徹也は、少し治りかけていたのにまた顔が赤くなってしまう。
「徹也様。もう片方も同じようにしてください」
「……マ、マジで……?」
「?はい。……もしかして、嫌、なのですか……?」
だが、シャーロットはそんな徹也の様子に気付かず、左手でも同じようにするように徹也に要求した。そんな要求に対して、徹也は戸惑ってしまい、本当なのかどうか聞き返す。今この状態ですら恥ずかしいのに、更にするのには抵抗があるのだ。
しかし、徹也の中にある抵抗など知らないシャーロットは、自分が嫌がられているのだろうかと勘違いし、涙目で徹也を見た。そのシャーロットの目に、徹也が抗うことなどできない。
「……分かった。分かったから、その目はやめてくれ……」
徹也は意を決して、左手も右手と同じように、シャーロットと繋ぐ。すると、シャーロットは先程の涙目はどこへやら、満面の笑みを浮かべた。
「……これで、いいか……?」
「はいっ!」
そうやってニコニコ顔のシャーロットとは違い、徹也は更に顔を赤くしていた。ただでさえ徹也は、異性と手を繋いだことなど皆無に等しいのだ。それなのに、今シャーロットとしている繋ぎ方は、普通の繋ぎ方ではない。
しかも、シャーロットの体が徹也の体に近くなっている。それら全てを合わせて、徹也はとても照れているのだ。
「では、徹也様。目を瞑っていただけますか?」
「あ、ああ……」
徹也はシャーロットの言葉に頷き、素直に目を瞑る。そんな徹也を確認してから、シャーロットも目を瞑る。
(な、何をするつもりなんだ……?シャーロットは……?)
徹也には、シャーロットがしていることにどのような意味があるのか、全く分からなかった。だが、徹也には何もすることができない。徹也はシャーロットからの説明を待つしかなかった。
しかし、目を瞑ってから少し経った時、徹也はシャーロットの体から何かが自分の体の中に入ってきたことを感じた。感じたことのないこの感覚に、徹也は驚く。
(な、なんだこれ!?何かが、俺の中に入ってきているのか!?それに、何だか力が湧いてくる……!)
徹也は入ってきた物が、自分に力を与えていることを感じた。間違いなく、何かがシャーロットから徹也の体の中に流れ込んできている。だが、何が入ってきているのかは、徹也には分からなかった。
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