第14話


「ついにきたな……」


「ええ。早く読み進めましょう」


 徹也と治伽は頷き合い、十代目の記述を見る。すると、こんな一文を発見した。


【適正属性……光属性】


 その文を見て、徹也と治伽はバッ、と顔を上げてその顔を見合わせた。また、求めていた文字があったからである。


「属性が載ってるってことは……多分使い方とかも載ってるぞ」


「そうね。期待せずにはいられないわ」


 徹也と治伽はまた本に視線を戻し、じっくりと読み込んでいく。そこには、十代王の情報の書き出しがあった。


【十代王、モナット二世は初代王以来の光魔法を扱えた。謎に包まれていた光魔法だったが、モナット二世によってその全容が明らかになった】


「……次だな」


「ええ。……いきましょう」


 そう言って、徹也と治伽は本のページをめくり、次のページにいく。すると、そのページには光魔法の詳細な情報が書いてあった。


【モナット二世が使ったとされる光魔法は、攻撃に回復、更にバフと様々な使用例があり、万能性が高い。伝えられている魔法は、光を放ち攻撃する《シャイニング・レイ》に、対象を回復させる《セイント・パージ》、そして対象に力を与える《べネディクション・メント》である】


「……おい望月。光魔法さ、チートじゃね?」


「……みたいね。万能が過ぎるわよ……」


 この文を読んだ徹也と治伽は、光魔法のあまりの万能さに驚いた。そして、徹也と治伽は光魔法について話し合う。


「新しい魔法とかも、割と生み出せそうな性能してるな。……色々試してみないと」


「……そうね。付き合ってくれる?」


「当たり前だろ。まあ、俺の特訓にも付き合ってもらうけどな」


「ふふ。もちろんよ。ありがとう。……じゃあ、続きを読みましょう」


「ああ。そうだな」


 徹也は治伽の言葉に頷き、本の方に視線を移す。治伽もまた、徹也と同じように本の方を見て先程の続きを見た。


【また、モナット二世は決して声が届かない場所にいる人とも会話することができた。それが光魔法によるものなのか、王の才能によるものなのかは分かっていない】


 徹也はこの記述を見て、多くの疑問が沸き上がる。いったい、どうやって会話したというのか。そしてそれは、治伽にもできるのだろうか。


 そのような思考で徹也の頭が埋まっていくが、治伽が徹也の肩に手を置いた。その治伽の手によって、徹也は治伽の方に顔を向ける。治伽もまたそんな徹也の方を見て、徹也に語りかけた。


「……私も不思議に思っていることは多いわ。けど、一旦飛ばしましょう?考えても分からないことなのだから」


「……分かってる。次にいこう」


 徹也はそんな治伽の言葉に頷き、本の方に視線を戻す。治伽もまた、本に視線を戻して続きを読み始めた。


 だが、その後の十代目についての記述には、十代目の功績しか載っておらず、役に立つ情報は何も載っていなかった。十代目のところを読み終わったと同時に、徹也と治伽は本から視線を外してお互いを見合った。


「……他には何もなかったな」


「……そうね。でも、十分に情報があったわ」


「……そうだな。望月の才能と魔法に関する情報は、結構揃った。後は検証を重ねていけばいいと思う」


(それに、多分望月はチートだってことが分かったな……。戦闘面では問題なさそうだ)


 あるとすればタレン王国の内部ぐらいだなと、徹也は考えた。チートで【女王】の才能を持つからこそ、王国から疎まれる可能性があるということである。


 そんな風に徹也が考えていると、治伽が徹也に声をかけた。


「ねえ、本の続きに戻らない?まだ、有益な情報があるかもしれないから」


「ああ。いいと思う。どんどん読み進めていこう」


「ええ」


 徹也と治伽はお互いに頷き合ってからまた本の方に戻り、十一代目のところから読むことを再開する。だが、十代目ほどの有益な情報は、なかなか現れなかった。


 徹也と治伽が読むスピードを徐々に上げつつ読み進めていると、徹也が気になる一文を見つけた。


【このシロースン一世の時代では、禁忌の魔法である召喚魔法を生み出し、異世界から勇者と賢者が召喚された。魔王によって魔力を持つ動物である魔物が現れ、タレン王国が滅亡の危機に陥ったためである】


「……望月。前にも、勇者が召喚されたことがあったみたいだぞ」


「……ここは、じっくりと読んだほうがよさそうね」


 徹也と治伽は、前に勇者が召喚されていたことに注目した。自分達と同じく、召喚された者だからである。そしてその後には、このような記述が続いていた。


【召喚された勇者は、魔法の基本属性を全て扱え、剣も扱えた。賢者も魔法の基本属性を全て扱えると同時に、聖剣という魔剣を創り、更に数々の魔道具を創りだした。また、勇者と賢者は魔物の副産物である亜人を保護したのである】


(魔道具に亜人か……。気になるな……)


 ラノベではエルフや獣人などが定番だが、この世界ではどうなのだろうかと、徹也は思った。また、魔道具は今すぐにでも知りたいと徹也は考える。なぜなら、今の状況を打開するような魔道具があるかもしれないからだ。


「……興味深いわね。これ以上のことは書いていないみたいだけど……」


 治伽の言う通り、勇者と賢者の記述は、【勇者と賢者はこの後、魔王を討伐しこの世界を救った】としか書かれておらず、これ以上の情報は望めそうになかった。勇者と賢者のその後などは一切書かれていなかったのである。


「まあ、他に詳しく書いてある本があるかもしれないし、あまり気にせずにいこう」


「そうね。じゃあ、次のページにいきましょう」


「ああ」


 徹也と治伽はまた本をめくり、次のページに読み進めていく。しかし、あまり情報にならない記述が続いた。


 徹也の部屋には、ペラペラと本のページをめくる音が響く。しばらくその本をめくる音が響き続いていたが、やがてその音が聞こえなくなった。


 その代わり、スー、スーという寝息が二人分、徹也の部屋で聞こえる。そしてそのまま、夜が更けていった。

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