プロローグ2

ーーー


だるい。とてつもなくだるい。

微かに太陽の瞬きを感じながら、この私。佐藤 亜奈は絶望していた。


今日は少しばかり飲みすぎてしまったのだ。……まぁ、その事実が発覚したのは全て飲み終わった後だし、仕方ない。


「み、みず」


なんて呑気なことを考えている場合ではなかった。単刀直入に言うと吐きそう。


嫌だよ三十路OLここで吐くの。普通に嫌だよ。


とはいっても視界がぐわんぐわん。アスファルトの文様が柔らかそうに揺れていた。


流石にこれは飲みすぎたぞ私。


脳内で必死に理性を保ち、朧気な足で壁伝い。


時間も時間で辺りは暗いし、大将ことイケおじはこんなか弱い乙女を1人で送り出すし。


もう、なんで__


「おえ」


はいやばい


猛烈な吐き気に襲われて、思わずドタバタ走る。途中でサラリーマンさんと目が合ったけれど、それどころではないのが現状。


「しぬ、っ」


今思えば、ものすごいフラグだ。やめろ。


ぶつぶつ怨霊の如く呟き、とにかくトイレに駆け込もう、とIQ3の頭ながら思いついた。


いつの間にか出てきた陽の光と、タイミングよく赤から青へと変わった信号。これを渡ったらコンビニだ。耐えろ、耐えてくれ。


鬼の形相でチラリと見えたコンビニに向かって、走った。


……いっそ、そこで吐いていれば


この瞬間、きっと私の運命は決まったのだ。



だって、その時



「え」


私目掛けて一直線。いや、眩しい光に気付いたのは、それより前。


あ、ベンツ


いいなぁ、裕福な家庭って


のんびりそう、考えていた。

止まってくれることを前提にしていたから。青なんだもの当然。


息切れ切れに、横目で、運転手さんの顔を見る。……なんと強面。表情筋使おうよ、もっとさ


クラクションも鳴らないのに


冷酷に口を結ぶ運転手さんの顔が脳裏に焼き付いて


何故か突然、目の前が暗転した。





__私が覚えてるのは、ここまでだ

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