気が付いたら俺たち三人だけのセカイにいた

みそカツぱん

1「全裸で閉じ込められた」

「なんで俺が……?」


 目が覚めたら全裸の幼馴染がいた。わけが分からないと混乱しつつ、目を離せないでいると、飛んできたのはビンタだった。

 どうやらこれは夢ではないらしい。しっかりと痛い。全く手加減などない一撃は俺の緩んだ頬を弾いた。俺は思わずのたうち周り、段々と痛みが引くと自分の身に起こっているあることに気が付く。


「俺はなぜ服を着ていないんだ?」


 このわけのわからない状況でがむしゃらに行動に移すのは危険だ。しかし情報が足りない。まずは覚えていることを思い出そう。

 少なくとも俺はあいつと同じベッドに入っていないのは確かだ。昨日は高校の定期テストの最終日だった。帰りに男友達とカラオケに行って、今日は普通に登校した。しかしなぜ幼馴染の金山咲なのか?こいつとはクラスが別だし、昨日今日と会話すらしてないぞ。


「あぁーーーーーーっ!?」


 考えごとの邪魔をするように咲が叫ぶ声が聞こえてきた。振り向いて近づいてみるとそこに寝ていたのはひとりの女だった。知ってる幼馴染と知らない女、裸の女が並ぶ不思議な光景に体の力が抜ける。


「変態っ!これ以上見たら目を潰すわよ!」

「……(怖ぇ)」


 その怒声に思わず回れ右をしてしまう。流石に性的にすごく興味があるが命は惜しい。俺はさっきのビンタの恐怖で縛りつけられていた。


「ちょっと、友梨佳!起きてっ!」


 ユリカ……?最近どこかで聞いたような?


「あ」


 思い出した。あのときの咲の友達だ。

 俺はテスト前に咲に無理やり勉強に付き合わされた。その時に一緒にいた咲の友達が確か三上友梨佳だ。三上は勉強が苦手な咲より数学が苦手だった。


「……なんで咲が?それに裸!?」

「よかった。目が覚めて……」


 俺は二人の会話を盗み聞きする。咲が怖いからあちらは向けないがこの非日常的な状況にある種の興奮を覚えていた。


「あたしもわからない。でも友梨佳がいて安心したよ」

「咲……」


 俺もいるよっ!!

 しかしここで登場すると咲に俺の股間が潰されそうだ。今は虫のように息を潜めるしかない。


「あ~あと意味わかんないかもしれないけどなぜか川村龍斗もいる」

「えっ、川村君!?」


 俺の名が出たがここで反応するのは悪手。俺は呼ばれるまで決して返事をしない。


「龍斗っ!!あたし達はあんたとは反対側を探すからこっち近づいてくんなよっ!」

「うっすっ!」


 ですよねぇ~。

 でも普通に考えて俺たち拉致されたのに全裸の女の子二人で出歩くのはどうかと思うのですよ~。それほど俺って信用ないってこと?凹むわぁ~。

 お嬢さんたち、後ほどゆっくりお話ししましょうか。幸か不幸か俺たちがいるのは外で手足も縛られていない。この状況に放り込んだ人物は俺たちに危害を加える気はないと願いたい。俺は素直に咲の言う通り反対側を見回ることにした。


「真っ白だ」


 しばらく歩くと異変に気が付いた。さっきまでいたのは野原に草花が生い茂っていた場所だった。しかし目の前には果てしない白い空間が広がっている。その境目はパソコンで書いた絵のように不自然に地面と繋がっていた。なんなんだこれ?


「わけがわからない。少なくとも俺の常識の範囲にあるものではない」


 どのくらいか分からないがボーっと立ち尽くしたのち出た言葉がコレだった。さっき痛い思いをしたから残念ながらこれが夢じゃないことは確かだ。盛大なドッキリでもないだろう。

 俺がここから脱出するには少なくともその白い空間を調べなければならないだろう。でもそれを直接触るのは怖すぎる。まずは地面を少し掘って土を撒くことにした。


「ほっ!」


 白い空間には地面のようなものがあるようで土はパラっと細かくまき散らされた。ついでに土の塊も投げてみた。それらに変化がないかしばらく観察した。それはすぐに表れた。一部の土が消えていたのだ。塊で投げた方の土はなんとなく少し減っている程度だった。

 この白い空間は上に乗ったものを溶かしているのか、取り込んでいるのか。他にも試せることは試したけど結局理解の範疇にないものだということは分かった。

 白い空間以外にもここの場所について観察した。そうしたら不自然なことがいくつかあった。ここには太陽らしきものが見える、それなのにどこを見回しても虫すらいない。それにいくら探しても土の上に小石が転がっていない。


 俺はこの場所がとても不気味に感じた。だってまるでゲームじゃないか。白い空間はキャンバスでその上にだれかが必要だと思ったものだけを並べたみたいだ。

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