第25話 キミを閉じ込めたい
「あっ、オーナー、お疲れ様です!」
「みんな今日もイケメンだねー。ボクたちには劣るけど」
「そりゃー、オーナーに勝てる方はいませんよーっ」
「わかってるねー」
「……」
ナルシーなヴィエルもヴィエルだが、それを全肯定なスタッフもスタッフだな!
「あっ、その方がこのカフェのモチーフになった、フェルデンさんですか!?」
エルフ、獣人、色んな種族のイケメンたちがフェルデンに注目した。
「そうだよー、わかっていると思うけど。半径30センチ以上リールお姉ちゃんに近づいたら、チビらすからね」
「……」
フルポーカー発動! こいつやっぱりスタッフにも容赦ねぇ!
そして、もう既に何人か、チビりそうなガクブル具合だぞ!
「ささっ、お姉ちゃんたちはボクたちと、あっちの個室に行こうー」
ヴィエルは奥にある鉄格子で隔離されているスペースを指差した。
「あそこの個室のコンプセプトはねー、『キミを閉じ込めたい』」
「……」
うん、やっぱり牢獄ってことだな!
まぁ、ここにあのふわもこ手錠と足枷がない分、良しとするか。
「あーっ、ボクとしたことが! ふわもこ手錠と足枷を持ってこればよかったー! 何たる不覚!」
ヴィエルは頭を抱えた。
「……」
やっぱり俺って変態ズと脳みそ一緒なんかな……。
しかし。
中もすげーな。
壁紙もアイアン! って感じ。確かそう、リメイクシートってやつ。
テーブルもアイアン! アイアン単脚のガラステーブル! イスもアイアン! だけど背もたれはリボン型アイアン! 座面はフェルデンの髪色を意識した、紫がかった黒。
え? よくすらすら説明できるなって?
いいえ、小さな星、豆星の者です。
「じゃあ、ボクたちは個室に入るから、豆先輩はテキトーに玉付きとくつろいでなよ。キミたちは呼ぶまで来ないでね」
スタッフにフルポーカーダメ押し。
「はい!」
スタッフきれいに直立不動。
「じゃあ、お姉ちゃん座ってー」
ヴィエルは鉄格子の扉を開け、中へ入るよう促した。
俺はあちらが気になりつつも、アイアンリボンに座った。双子天使は隣の席からイスを持ってきて俺を挟んだ。
「見事に黒と紫だらけー、やだー」
右隣に来たリュゼが、ない胸を俺の腕に擦り付けながら、メニュー表を広げてきた。
「……」
メニューは、
紫キャベツのコールスロー、黒カレー(イカスミライス)、紫芋のポタージュ、豚肉の黒胡麻蒸し。……エトセトラ。
ええ、はい、見事にフェルデン色ですことー!
「フードはボクが、デザートやスイーツ系ドリンクはサージュが考えたんだー」
奥の牢獄から声が聞こえてチラリ。
一枚のメニュー表を双子が持ち、フェルデンに見せているー。足を組んで肩を抱きながらー、はい、ホストー! それもNo.1と2ー!
「うーん……、お食事も捨て難いのですが、寮母さんに怒られてしまうので……。デザートにしますね」
「なら、僕のお勧めをぜひ食べてくれ」
「張り切ってるねーサージュー。この間の撮影の時、おもてなしのお菓子活躍できなかったもんね」
「そうなんだ。そして、そうなんだ」
なんか、ジャニーズにありそうな歌詞のセリフだな。そうなんだー、そしてっそうなんだー、ってな。
「この間渡せなかったお菓子、持って帰ってくれ姉さん」
「え、いいんですか?」
「ああ、リール姉さんに食べてほしくて用意したんだ」
「サージュは顔に似合わず、甘党だからねー」
「顔に似合わず辛党な兄さんには言われたくないな」
「……」
お前ら顔一緒ですからー!
「じゃあ、用意するから待っていてくれ」
サージュが立ち上がった。
「え? オーナーのサージュさん自ら作ってくださるんですか?」
「当然じゃないか」
サージュは右手で眼鏡をくいっと上げた。
「僕が、姉さんのことだけを考え姉さんをイメージし姉さんの喜ぶ顔を想像しながら姉さんのためだけに開発したんだ。その姉さんに食べてもらえるなら、僕が腕を振るうのは当然の事さ」
「…………」
突然ですがクエスチョン。
今、サージュは「姉さん」と何回言ったでしょうか? 三秒以内にお答えください。
チッチッチッチッチッ、テロリンッ。
ターイムアーップ! 正解はー? 四回?
ざーんねーん! 全員不正解ー!
最初の姉さん攻撃にみんなやられましたねー? よーく、思い返してみてくださーい。
まず。
『僕が、姉さんのことだけを考え』
一回。
『姉さんをイメージし』
二回。
『姉さんの喜ぶ顔を想像しながら』
三回。
『姉さんのためだけに開発したんだ』
四回。はい、この怒涛の四回で終わったと思ったなー? 甘ーい! ダメ押しのー。
『その姉さんに食べてもらえるなら、僕が腕を振るうのは当然の事さ』
五回ー。
というわけで、正解は五回でしたー。今日は正解者ゼロー。みんなー、諦めずに来週もーレッツビーンズ!
……アホなクイズ大会をやったら腹が減ったな。
この黒カレーでも頼むか……。
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