メンヘラ!

@Yomuhima

第1話

大学の講堂で俺は教授に縋り付いてた


お願いしますっ。レポート待ってください。1人暮らしでインフルエンザで7日死にかけてたんです。


週一の小レポートを寝込んだ俺は提出出来なかった。


厳しいと有名な生理学の教授は融通が効かない。


その時教授が言った。

昔ね彼女と遊んでて忘れて、その上にインフルエンザ理由にした奴がいてな。

インフルエンザなんて今良い薬あるんだから直ぐに医師にかかれば予備日を合わせても4日だ。


いやいや、39度の熱で一人で病院とか無理ですって。死を覚悟してましたもん。


信じられないな、食事はどうしてたんだ。


少し前に大量に学祭で買ったのを貰ったじゃがりこに水入れて食ってました。

水道水と合わせてコレで生きてました。


君…彼女いたろ?僕が言うのもおかしいけどな頼りなさいよ。


教授?彼女なんて居たら今頃こんな事言いませんよ?


いや、居たろ?こう、清楚な黒髪の長い美人な子


はぁ?勘違いでは??そんな、清楚な子がご飯作ってくれたり病院付き添いしてくれるとか、夢ですねぇ


教授は気の毒な顔で俺を見て


今回だけだからな。明後日Bクラスが同じ課題出すから、一緒にだせ。自己管理も仕事だぞ


と言ってさって行った。 


四限に出てから帰りスポーツドリンクと惣菜を買って家に着いた。

カレーの匂い。

何処からだろうか。

重い荷物をもちながら、鍵をさす

開いてる。閉め忘れたか?


そっと開いた中から、コトコトと鍋の音とカレーの匂い


何か居る!黒髪の長い清楚な……

いやいや、貞子じゃん

教授、コレを清楚なって貞子だよ


あぁお帰り、貴方の言葉嬉しかった。病院の付き添いも任せてね。


いや、確かに言ったよ、でもなお前じゃ無いんだ。しかもなぜ知ってる


そうそう、彼女出来たらしたい事言ってたね。やろうね。


こっわ!全部自分へのメッセージだと思ってる目だ。逃げて俺超逃げて




結局俺は逃げれなかった。


貞子は居座り続け、聞いてないのに、想いの丈をぶつけてくる。


ねぇ聞いてる?見ててね。私すぐ傷付いて死んじゃうんだから。


だーかーらー

もぉ何なの?俺の何がそんな良いの?

俺オマエ知らない。見た事無い。誰だよ。貞子って思わず呼んだら返事してたし、まさか、本物?


あの時出会ったあの時貴方の優しさに包まれて、あぁ私を追い出したりしない。受け入れてくれる人だって分かったの。かなり古い言葉だけどソウルメイトって言うのかな。


いつよ?覚えてない


突然の金切り声が俺の鼓膜を裂く

発狂中暫しお待ちください


なんとか、撫でて落ち着かせ、貞子の口から君の見た事が聞きたいなと、綱渡りの様に聴いてみる。長え


要約すると。

駅のホームで飛び降り寸前の貞子を、光を纏った俺が、何やかやで助けて、魂が惹かれて付き合ってる。肉体もこうして上手く連動してて、うんたらかんたらという事だ

こぇえよ?もう、ストレートに怖い


覚えてないが、その日付けをスマホで確認したら、しこたま酔ってゼミの仲間とクリスマスツリーを買って振り回してた日だった。もしかして、なんかしたのか俺。


取り敢えず酔わない事で有名(仲間内のみの名声)な、高知くんにその日の事聞かなきゃ。


渋る貞子を残して俺は、家を出た。

どうやって納得させたのか?

もう、ね、腱鞘炎なるほど撫でたわ。

貞子は風呂に入らない。だから髪に触った手が臭い。撫でると何でか話を聞く様になるのだがな。


外の空気はうまかった。鼻馬鹿になってたんだな。


高知くんは直ぐに電話に出た。

彼が言うには、その時貞子は確かに居たらしい。大学の附属高校の制服を着た清楚な子で、酔った俺が高笑いしながら、終電前のホームで立つ女子高生とツリーを並べ立て撫で撫でして、

突然泣きながら、死ぬな!と叫んで寝た。

との事



マジか


最初から高知くんに聞いたら、1分の話だったんだが。


オレはサッと110番した。

直ぐにハキハキした声の男性が、どうしましたかと聞いてくる。


とにかく不法侵入の女の子をどうにかしてくれと、言って住所を言えば。

急行しますと、来てくれて。免許証を確認された。

共に帰宅してみれば。


出た時と全く同じ位置で寝る貞子。

貞子はゆっくり起き上がり、オレと警官を見た。

そしてそして、お巡りさん!助けて!と、縋り付く。

呆気に取られるオレ。

警官が此方に厳しい目を向けて、話をきくから、パトカーにと促される。



結論から言うと


言いくるめられました。


絶句してフリーズしてしまった俺の横で痴話喧嘩の方向性で話は終わった。

何かあったら呼んで良いからと、署の電話番号を残して。俺の呼んだ警官は去った。


お巡りさんは、もう一度ちゃんと話し合いなさいと言って帰った。

いや、もう一度と言うか、貴方と聞いた話しが、コレが1度目のお話だったんですよ。


貴方方がちゃんと捜査したら不法侵入の証拠とか出ないか?

安アパートの鍵は古い作りだから、もしかしたら出ないかもな。


おれは、取り敢えず。隣りの貞子(仮名)改めアリツカユウを見下ろした。


俺のパーソナルスペースは80cm基本的に男女関係なく80と決まっている。

だがこのユウさんは、斜後ろギリギリの死角から恋人の距離と呼ばれる40cmに忍び寄るのがお得意の様だ。


この息殺して動く動き、頭の回転の速さ、嘘の整合性。彼女は気狂いでは無い。

虐待児だ。別に虐待は貧乏の専売では無い。お金持ちでも虐待はある、彼らは隠す事に長けていたり、お金で解決する事が出来るから表在して無いだけだ。


俺は決めつけに近い先入観で推理する。

最初はただのドウパミンやら何やらが病の人だと思ってサクッとお引き取り願ったが。失敗した。手をかけただけ人は対象に執着する。コレは長くなりそう。


俺はこう言うの慣れてるけど。


定期的な確認無言電話とか、数人いる。


婚姻届は、俺が行かないと不受理だし、家の中も最低限の物だけ、貴重品は貸金庫だし、案外貸金庫は安い年間1万少しで安心を買えるなら安い。


はぁあ逃げるか。幸いもうすぐ冬季休暇だし、俺は3年生でほぼ必須単位は取った。


面倒くさいし何で俺がと思うが、どちらにしても、合わない行動的な人間に粘着されたら、第三者を入れて、一回ちゃんと向き合ってから、無理なら逃げる。

士業が良いんだろうけど、落ち着いて話せる成人なら誰でも良い警官とかでも良いんだけど話すなら喫茶店だ。だから臭いをとれ、風呂に入れとスーパー銭湯で千円渡す。

地方の学園都市のここは何でも近くで揃う便利な町だ。

どうせちゃんと話すまで逃げないからと。

オレはロビー横の小さな喫煙所で頭を抱えた。

出てきた彼女は薄倖な清楚?であった。

ワンレンの髪は斜めにわけ、入浴セットに入ったカラフルなゴムで、結んでいる。

すっぴんの顔は整って居るが頬が痩けて目は切長の一重。銭湯の売店で温泉マークのスエット上下を買い与えたので、今まで着てた服はコインランドリーに入れた。

金がゴリゴリ減って行く。本当に迷惑だが、話す環境整備のため出すと決めたのは俺だから仕方ない。


やって来たのは俺の行きつけの喫茶店。同郷の友人がバイトしてる。


ここのパンケーキ食べて見たかったんです。貴方が食べてて美味しそうだったから。

パンケーキ紅茶セットとウインナー珈琲、頼むわ。香川くん。(友人の名前)


オーダーかしこまりました。デートに来んなケッ!と言った後、俺の目をじーと見て、注文を通しに行く彼の背中をぼんやり見た。

奴は気がついてくれただろう。少しで良い気にかけてくれるのがありがたい


なあ、ユウさんよ、嘘付いたり、叫んだり、怒鳴ったり会話する姿勢で無いと判断したらオレはココから消えるからな。

どうせ家探ししたろ?貴重品無かったろ。出て行けるんだ直ぐにでもな。

それで、、、俺は君が怖いです。理解したり優しくしたりは出来ません。なので俺の事は思い出にしてもうあわないで下さい。


どうして?死ぬなって言ってくれた貴方が

私を殺そうとするの?離れたら駄目なんだよソウルメイトだから、離れたら死んじゃうんだよ。


もし、君が自死で死んだとしても、君を殺したのは僕じゃ無い。僕は自責しない。

君が傷ついた責任があるのかも知れない。けれど俺も君の嘘に傷ついてるよちゃんと話す約束を守ろうとしたのか、顔をくしゃりと歪ませて、泣かずに堪える彼女に俺は言う


俺を揺さぶる事は出来ない。だから、罪悪感に話を持ってくのは無理だ。

君の生い立ちにも興味は無いから聞くつもりは無い。

俺を論破した所で俺を変える事は出来ない。納得いかない事はしないからだ。

俺を刺したかったらどうぞさせ、俺が死んでも意味はないけどな。


どして?撫でてくれたのに


話をさせるために仕方なくだ。男が全員、喜んで女子高生撫でると思うな。

話が出来ないフリをして俺の行動をそう誘導したのは君だ。


ぼたぼた涙を落としながら彼女は言った。


どしたら良い?どうしたら一緒に居てくれる。私のこの愛を信じて受け取ってくれる?お金?パパの友達のお仕事したらたくさんたくさん出してくれるから、少し待ってて持ってくる。

優しい人のはずでしょ?見てたもの。見てたんだもの。貴方の事

毒を食べた猫自腹で治療したよね。

鼻つまみ者の公園の徘徊おばさんとちゃんと話してあげて、それから、万引きしてた男の子見逃してあげて、それからそれからそれから……

彼女はしゃくり上げ始めた


あの猫な公園で生きたまま腐ったよ。飼える環境に無いのに考え無しに命助けた、苦しんだだろうさ。

公園のおばさんな支離滅裂なのに下手に俺が会話して、変な自信付けて公園の管理事務所に乗り込んでよく分からない主張して暴れちゃって今警察に捕まってる。

万引き見逃したのはな、めんどくせぇからだよ。おれ、店の事もそいつの事どうでも良いもん。いつかバレて困るのはソイツ

万事塞翁が馬、禍福は糾える縄の如し。

良い事と悪いことは見た目に分からない。


嗚咽を漏らす細すぎる肩を見ながら、

俺は内心思った。カレーを作ってたきっとあれが彼女の幸せの形で、食べてないが材料は素朴だった、お金は作れると言うけど風呂に入らず痩けた頬で無料の牛脂と野菜で作

無料の牛脂と半額野菜で作るカレー、ほつれた服装。彼女はお金がない。そのパパの友達の場所で、少しの時間でたくさんたくさんお金を稼ぐくらいなら、飢える方がマシな程なんだろう。

どんな風に痛め付けられたか推測するな、考えるなよ俺


子供特有の頬を汚い大人に褒められたから、早く大人のほっぺになりたいのって、食事を食べれなくなった奴をふと、思い出す、引かれるな考えるな。

アイツは最後どうなった。虐待する親の手からはなれ結局施設でもっと辛い目にあっただけだろ。弱さを許容するが、優しさとやらは唾棄する。考え無しの善を憎む


ため息が出た。


弾かれた様に彼女は顔をあげ姿勢を正した。なにそれ怖いその反射運動怖い。


ぐるぐると渦巻く様な黒い瞳の細かな揺れが、見開いた瞼から溢れ落ちそうだ。


   貴方も私が汚いっていうの?


何のトリガーだよ。勘弁してくれ。クソデカため息が駄目なのか。


    結局貴方も同じなのね。


そうだと言ってる。こっちからしたら君は感情の当たり屋だ。俺の様な木端にこだわるなよお前さんに献身的ないい奴見つけろ


揺れる瞳の奥、脳内でなにを見てるのか俺は知らない。

けれど、俺を見てないのは間違いない。彼女は彼女の過去と話してるだけ。


 そう、分かった。迷惑かけたわね。


彼女の瞳から力が抜けた。

初めて清楚な美少女が現れた。教授と高知くんの言うのは、これか。

冷静な視線、ピント伸びた姿勢、不可侵な空気。温泉マークのスエットでも変な髪ゴムでも、何処か古代の巫女の様な冷たい空気感。彼女はとても美しい。

だからなんだと?思い、あぁ成るこの美しさはこの子の鎧。だから、俺に縋るうちは俺には見えない、むしろ悪霊の様な泥其の物に感じたのか。とてもとても皮肉だ。

コレからも欲しいものには忌避され、要らない多数には渇望される。其れでも孤独よりは余程良いと冷たい鎧を纏うだろう。




追加香川くんさ、空気読みすぎてパンケーキと珈琲持ってくるの忘れてた。


俺が一人で食べた。


本当は大分泥臭くて数ヶ月かかり、その間俺はネカフェでねてた。

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