又聞き料理

 これは昔料理人をやっていた父親に聞いた話なのですが、『料理』と言う漢字の意味でした。

正確な意味で合っているかは分かりませんが、一先ず説の一つとしてお聞きください。


 まず先に言われたのは、日本料理には料は有るけれども理が無い。

 西洋料理には料は無いが理が有る。

 料理が揃っているのは中華料理のみ。



 父親が言うには、料とは豊富で新鮮な材料。そして理とは材料を調理する技であると。


 この話を聞いたのはもう二十年は前の話であるので、昨今の日本料理の人気とは掛け離れている評価に聞こえるかもしれない。


 しかしそこは父親も和食料理人。それぞれの食べさせ方が違うと言うのだ。

 西洋料理は旨いソースで食べさせる。日本料理は素材を食べさせると言う。

 中華料理はその両方であると言う。


 和食中心の料理人の見方なのかも知れないが、祖母の葬儀の後に食事会が有りました。和食中心のコースの様なもの。

 父が言います。

 「量は多いけど大半の人は最後迄食べきるぞ」


 その通りになりました。

 分量が多く満腹であるのにスルスルとお腹におさまりました。

 それ見たことかと父。和食は基本的に薄味で、徐々に舌に食材の味付けが馴染み、満腹だとしても苦も無く食べ切れるのだと。

 「これが和食と洋食の違いだよ」

 食後の一服をしながら父が言います。

 「今は日本人の舌も洋食風の味付けが濃い物を好む様になって来てるが、昔ながらの味わいも良いものだろう?」

 少し誇らしげにそう言いました。


 お酒を呑める様になってから何となく分かったのですが、ビールやハイボールの刺激的なお酒には唐揚げ等の揚げ物、ガツンとした味が合う。


 日本酒等の時は気分的に刺し身やお浸しや煮付けに箸が伸びる。恐らく私だけではないと思います。



 中華料理の味わい方は未だに掴みきれていませんが、食事も日々の鍛錬と昔の戦国武将の逸話にも御座います。


 料理程多角的な見方のできる身近な物も少ないと思います。

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