日本の料理、びしゃ玉菜の花和え
今年も新年を無事に皆様迎えられましたでしょうか?
新年からお仕事の方もいらっしゃると思います。
お目出度くもありますが
お疲れ様です。そう申させてください。
その皆様に、「日本の料理」のお話を「仕入れ」て参りました。
料理のお話ですので、少しずつ品をお出しできればと思います。
新年、成人されている方ならお神酒、お屠蘇と酒精を楽しんでいらっしゃる方も多いと思います。
酒盗
ご存知でしょうか?
鰹の内臓を塩漬け、塩辛にした逸品。
名前の由来は複数あり、一つにはこの塩辛を食べると酒に合いすぎて「盗み呑み」しても食べたくなるから酒盗。
他に知るものですと、この塩辛はそのままでは塩辛過ぎて食べれないので「酒」で洗い味を馴染ませる。
自分の呑む分の酒まで塩辛に「呑まれて」しまう。これでは塩辛に「盗み呑み」された…と言う意味で酒盗…であるとも。
ですが料理の世界でも酒盗と日本酒は「好相性」であるそうです。
惜しいのですが…もう引退されてしまった板前さんに教えて頂いた事です。
その板前さんは料亭の「花板」、分かりやすく今風に「料理長」を長年勤められたお人。
お話だけでも正に「ご馳走」でした。
その方の学んだ中に、呑み人の酒を盗む酒盗から更に「酒を盗む」技がありました。
日本酒を鍋に、火にかけて、そこに酒盗を「煮溶かす」そうです。
そして十分に馴染んだら火を止めて置いておき、上澄みが出来たらそれを濾す。
すると「酒盗酒」なる調味料が出来るのだそうです。
酒は呑んでも呑まれるな
酒盗は酒に呑まれてしまいました。
そこに新たなお仲間が。
鶏卵の登場です。
鶏卵に塩、味醂を入れた物を半熟の炒り卵に仕上げる。
そうした物を
びしゃ玉
と呼ぶそうです。
そのびしゃ玉。新春を告げる菜の花の和え衣として使いますと
菜の花の新緑に映える黄色。
正しく春の装いになるそうです。私は食べた事が無いのでその方の調理の手真似や語り口で想像します。
そのびしゃ玉。
びしゃ玉の調味に「酒盗酒」を使いますと…
化けるそうです。
そのままでも美味い酒盗卵。
それをびしゃ玉にして菜の花と和える…
それだけでえも言われぬ「美味」になるのだとか。
ですがその方が申しますに。
その「知識」「技術」を「学んでくれる」人は少ないそうです。
確かに酒盗酒卵菜の花和え…懐石で出しても恥ずかしくない一品。
ですが料理人が「勤め人」になっている現在。給料以上に仕事をする料理人は絶滅しつつあるそうです。
更には「低価格」を求められ、手間暇掛ける「技」よりも、卸が下拵えをした「輸入品」を納品するので益々技術継承が難しい状態だと。
そしてその花板さんは「引退」を選ばれました。
私が料理の話をお願いしますと
「今更誰も聞かないのに物好きな」
と苦笑されます。
私は料理人では残念ながらありませんが、消えゆく技や知識を聞ける事を嬉しく思い、ここに話して頂いた一部を「想像の料理」としてお届け致します。
春告げる酒盗卵菜の花和え
どの様な逸品を想像して楽しみましょうか。
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