『もっとひかりを』
やましん(テンパー)
『もっとひかりを』
『これも、また、フィクションです。』
夢の中で、まっくらな地獄の職場に落とされたやましんが、地獄の鬼たちの責め苦の中に叫んだ。
『もっとひかりを!』
すると、責めていた、鬼たちが、一声に叫んだのである。
『もっとひかりを!』
その様子を地獄カメラで見ていた、アマテラスさまは、かつての体験からも、世間における光の必要性を熟知しておられるから、閻魔さまに、地獄も、もう少し明るくしてみてはどうか、作業効率も上がるのでは、と、書面で提案した。
さらに、こうも、付け加えた。
『時代は、流れて行くもの。われわれは、すでに実在さえ、明らかではない。真実に光を与えることも、為政者が正当に隠すことと、同じくらい大切です。』
すると、小野篁さまから、返書が返ってきた。
『いつも、お世話になっております。
アマテラスさま、益々ご清祥のことと、深くお慶び申し上げますとともに、深く感謝申し上げます。
さて、ご指摘の件ですが、地獄は、非合理的、非倫理的、また、極悪な作業環境が必須とされます。
そもそも、鬼たちは、なにかにつけ、隙があらば、弱い罪人たちに肩入れしたがります。
早く言えば、鬼とは、敗者の神なのですから。
だから、鬼たちは、基本的には、敗者の味方なのです。
現世で栄華を誇ったものは、憎しみの対象となることもあり得ますが、鬼たちは、実は、激しい苦しみに悶えながら、罪人を責めているのです。
そこが、現世の懲罰とは、多少違うのです。
あらかじめ、そこを、わかったうえで、敢えて、責め苦を行わせているのであります。
もっとも、わたくしも、あなたさまがおっしゃることが、わからぬではありません。
北風さんと、太陽さんの故事にもありますが。
しかし、地獄は、かならずしも、性善説には立っておりませんし、その改革は、なかなか、難しいのです。
たしかに、地獄が、適度に明るくなれば、責め苦の精神的効果が、減少する可能性は、ありますし、時代には即しているかもしれませんが、鬼たちが、相手を良く認識できるので、手心を加えやすくもなります。
それは、不平等を生むかもしれません。
相手が誰か判って責めるのは、現世の特徴のひとつですが(例外もありますが。通り魔とか。辻斬りとか。)、地獄の責め苦に手加減はありません。
それが、特徴なのです。
しかし、あなたさまから、そのようなお話が来たことは、まことに、有り難きことであり、すでに、上司に報告いたしました。あしからず。』
敬具
それで、やましんは、目が覚めた。
枕元のラジオが、こんなことを、言っていた。
『やはり、難しいこと言うやつって、職場で、嫌われるじゃないですかあ。ローヤリティ低いって。でも、意外と文句いうやつのほうが、実は、真実を見ていたりもするし、単なる怠け者のこともあります。まあ、そこを、みぬくわけです。』
『なるほど、あ、時間ですので、また、続きはニュースのあとで。今夜は、14日目尋問担当、初江王さま、本地仏は、釈迦如来さまの第2秘書、ツーさまにおいでいただいていま〰️〰️す。』
『では、ニュースです。現世で感染が広がるコロナウウィルスの変異種で、鬼たちや、亡者にも感染するX種が侵入したと地獄庁が発表しました…………』
『なんだって、もう、夢は終わりだろう。』
そこに、鬼さんが、現れた。
『やましん、時間だ。人生という名の休憩は、終わりだ。さあ、責め場に行こう。』
『あの、どこまでが夢なのか、教えてくれる?』
『そりゃ、むりだ。あんたじしんが、夢の中の産物だからね。バブルなんだから。』
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『もっとひかりを』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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