第93話 旅立ちの前に…2

 夜。

 いつもの広い部屋ではなく、別の部屋に布団ふとんが二組。

 先に慎也が布団に入っている。


 入浴を終えた恵美が入ってきたが、なぜか、雰囲気が…妙に色っぽい。入浴後の為か、はたまた、別の理由か、ほんのり桜色の顔…。


「よ、よろしくお願いします」


 恵美はモジモジと、大いに恥じらいながら着物を脱いだ。

 いつも、卑語を平然と口にするヤツが、二人の他には誰もいないのに…。


 慎也の布団に、素早く潜り込んでくる。

 そして、いきなりキス。それも、濃厚な…。


 舌をしっかりからませ、十分に吸い合ってから口を離す。

 恵美は、恥ずかし気に言った。


「告白終了…」


 告白と言っても、彼女は他に何も言っていない。

 キスに特別の意味を込めたということだ。


 …自分からするキス。それも、濃厚なキス。


 …つまり、「大好き・愛している」という…。


 つい先日も、杏奈・環奈にされたばかりの事。そして元々、キスに特別な意味を付与してきた張本人は恵美なのだ。

 それがきっかけで慎也は、杏奈と環奈にキスをしていなかった。

 だから、キスの意味は言われるまでも無く、十分理解している。


 ただ、なぜこんな、回りくどいことをするのか。

 …それは、恥ずかしくて「好き」の一言が言えないから…。

 卑語は平然と口にするクセに…。


 その恵美らしさに、慎也は笑顔となった。


 慎也の笑顔に照れながら、恵美からリクエストする。


「今日は久しぶりに、生でお願いします」


 神子かんこが無事に育つまでということで、出産後は避妊していた。

 恵美は、最後の夜ということで、その解禁を願い出たのだ。


 なお、何故か話し方が、いつもの間延びしたモノと違う…。

 まあ、話し方のことはさておいて、慎也に恵美のリクエストを断る理由は無い。慎也はうなずいた。


 愛らしい恵美の胸の膨らみをみ、吸う。

 徐々に下の方へ…。

 脚を持ち、開かせる。


 ………。


「あ、あ~…」


 恵美は右手親指の爪を噛みながら、淫靡いんびな声を上げた。

 慎也は、ゆっくり繋がる。


「う…、うあ~、いい、いいよ~…」


 ………。


「あ~、気持ちイイ~。もっと~!」


 ………。


「うあ~。イイよ~!もっと~!」


 ………。


「あ、い、イク。イッちゃう~!」

「うっ、出る!」


 恵美の体内に、勢いよく射精した。

 恵美はピクピク体を痙攣けいれんさせて、慎也の精を体内深くに受け取る。無事、絶頂に達したようだ。


 そのまましばらく、つながったまま…。


 恵美は、久しぶりに注入してもらった慎也の精液が、自分の腹部奥にしみこんでいくような錯覚に浸った。


 …錯覚なのか、事実なのか…。どちらでも構わないのだが…。


 …至福の時間…。恵美は、たっぷり余韻を味わう…。


 少ししてから、慎也は、ゆっくり恵美との繋がりを解いた。

 が、恵美はぐに抱き着いてきて唇を重ねた。

 互いに舌をからませ合い、吸い合う。


「二回戦よ」


「え~。ちょっと休ませてよ」


「ダメです! 沙織のときは六回したでしょう。私も同じだけ要求します!」


 やはり、間延びさせずに言う恵美。

 対して慎也は…。


「う、嘘~…」


 沙織には、なんといっても、あの特殊能力がある。本人は使ってないつもりでも、漏れ出る気には催淫効果があり、何とか六回こなせた。

 しかし、それが無い恵美にも、となると…。


 キツイ夜になりそうである。





 一方、別の部屋。


 舞衣の情けない悲鳴が木霊こだまする。


「私には、こんな趣味は無い~!」






 朝。

 祥子が朝食の準備をしていると、いつもより早く恵美が起きてきた。とても気分良さ気である。


「おはよう恵美。十分満足させてもらったようだな」


「おかげさまで~。我儘わがまま言っちゃって、ごめんなさいね~」


 話し方は、いつも通りだ。


「よいよい。ワラワは、いつでも出来るのだ」


「おっ早うございま~す!」

「今日も気持ちの良い朝ですね~!」


 杏奈と環奈が、そろって起きてきた。

 こちらも、今日が別れの日ということを感じさせないような、満面の笑顔である。


「お、おはよう。其方そなたらも…。十分、満足した様じゃな…」


「は~い!楽しかったですよ~。ねっ!」

「ねっ!」


 二人で見合って可愛らしく首をかしげ、手をつないでスキップして行ってしまった。異様なテンションである。


 その一方で、


「おはようございます……」


 どよ~んとした雰囲気の舞衣が起きてきた。


「な、何じゃ!どうした?」


「どうした、じゃないです…。私には、レズの趣味は無いんですってば!」


「いったい何させられたのじゃ」


「言いたくありません!」


「いや、面白そうじゃから、是非ぜひ聞きたい!」


 話したくないオーラを目いっぱいただよわせながらも、舞衣は渋々口を開いた。


「……。フィンガーアタックさせられました。

 慎也さんのを真似てやったけど、私じゃぐにイカせられなくて凄く時間かかっちゃうし、あの子たち交互に二回ずつ要求するから…。

 その後、二人掛かりで襲われて、キスされたり、胸まれたり、アソコめさせられたり、舐められたりで、私にも指入れられて、それぞれに二回ずつイカされました。

 ほとんど寝かせてもらえなくて…。あの子たちも寝てないはずなのに、何であんなに元気なのかしら…」


 聞いていた恵美がき出した。


「ちょっと!あなたの所為せいだからね! そっちはどうだったのよ!」


「私は、久しぶりに、生でしてもらっただけで~す。ただ、沙織と同じ、六回だけど~!」


「六回……。で、いつも早い慎也さんが起きてこないわけね…」


「そういうことで~す」


 恵美も、スキップしだしそうな雰囲気で出て行ってしまった。


 舞衣と祥子は、顔を見合わせて苦笑いした。

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