第20話 四人の巫女たち2

 石造りの二階建ての建物。

その向こうに、さっきの四人が入っていった平屋木造の建物。

 その向こうは畑。でも、見たことない作物が植わっている。


 畑の方に歩いてゆくと、その向こうにも木造の建物。

探検中女子四人は、その一番奥の木造二階建ての建物の前に来た。

 中をのぞくと、ツルの恩返しの話に出てくるような機織はたおり機がある。


「これで、あの着物の布を織るんだね~」


「えっ、これで? 自分で織るんだ……」


「で~、この畑で~、食べる物、育ててるんだ~」


 それらの奥は、もう森になっていて道も無い。


 戻って反対側へ進んで行くと、すぐに海に着き、後は道が無い。


「ここで魚釣ってたんだね~」


「ホントに店も何も無い……。電気も無いって、夜どうするの?」


 沙織は涙目になっている。双子も不安そうにしている。


「そうだね~。まあ、お願いすれば~、寝るとこくらい貸してもらえるんじゃないかな~」


 恵美は空を見上げる。

神隠しにされる前の世界では雨が降っていた。だが、ここは良い天気だ。


「こっちは晴れで良かったよね~。これで雨だったら、かなり悲惨なことなってたよ~」


「恵美姉様…」

「これからどうします?」


 双子は恵美も「姉様」と呼ぶが、恵美は本当の姉ではない。血のつながっている姉は沙織の方である。姉の親友である恵美をしたって、そう呼んでいるのだ。


 双子の不安げな問いに、恵美は少し考えた。


「さっきの四人の所に行くしかないよね~。このまま夜になったら~、私たち野宿することになるからね~」


 恵美の回答を聞いた沙織は、渋い顔をしている。

 恵美は、そんな沙織の表情を横目でチラ見し、確認した。


(丁度、一時間くらい経ったころか。ということは、あの四人は今頃…)


 お嬢様育ちの沙織と双子に見せても大丈夫かな…と、恵美は少し迷った…が。


(見せないと納得できないだろうな。二人はともかく、沙織が……)


 恵美は双子の手を引いて、サッサと石造りの建物の方へ進んだ。

 それを沙織が、あわてて追いかける。


「ちょっと、恵美!待って! あ、あの、今行ったら、そ、その、んじゃないの?」


「だろうね~。入って見て良い~って言ってたから~、行きましょう」


「ちょっと、まずいって!」


 恵美は躊躇ちゅうちょなく二階へ上がり、開いている扉から双子を連れて入っていってしまう。


「おう、来たか。丁度良い所じゃ。見て行け」


 足を投げ出して坐っていた祥子が、声をかけた。


 恵美と双子は、祥子の斜め後方、入り口近くの壁際に坐った。

 少し遅れて入った沙織も、戸惑とまどいながらならう。


 舞衣・美月・慎也はベッド横に立っている。


「さて、舞衣よ、順番はどうする?」


 祥子の問いに少し考え、


「美月。先にどうぞ」


 舞衣は、右手の掌を上に向けて差し出し、美月をうながした。


「良いんですか?」


「ええ、良いわよ」


 美月はうなずいて、少し恥ずかし気な表情で着物を脱いだ。

ただ、脱ぐのに迷いは無い。ごく自然のことという感じで…。


 現役アイドルが、目の前で全裸になる…。

 綺麗な体。


 沙織と双子は唖然あぜんとして見ている。

 恵美は…、やはり表情を変えない。完全なポーカーフェイスだ。


 慎也も裸になる。


 既に屹立きつりつしている股間のモノ…。

当然これも、外野席の新客四人の目に入る。

 初めて実際に見た生殖準備の整った男の器官に、沙織と双子は顔を真っ赤する。が、目は離さない…。

 恵美は…。特に変化なし…。


 ディープキス、胸の愛撫あいぶ、そして脚を広げさせての刺激…。

 …よがる美月。それも、結構、いやかなり激しく…。


 その美月に、あの男性器が……。


 ……ゆっくりした動きから、徐々に速く。


 大いに喘ぎ悶える美月…。


 そして。


「あ~!! だ、だめ~、い、イク~!!」


 美月の絶叫。体を痙攣けいれんさせる。


 射精終了……。


 沙織と双子は、その様子を真っ赤な顔で見ていた。口に手を当てながら…。


「あ、あれを私たちに、やれっていうの? こ、この妹たちにも!」


 沙織が小声で、震えながらつぶやく。


(あちゃ~、逆効果だったかな~)


 恵美は、少し後悔していた。

 まさか、こんな激しいのが行われるとは思っていなかった。

何といっても現役アイドル。帰るために、仕方なくしているだけと考えていたのだ。

 だが、美月は、どう見ても嫌々という感じではない。絶頂に達し、気持ち良さそうに体を痙攣させている…。これでは、逆上した沙織が、何を言い出すか…。


 が、その時、事態が好転(?)した。

起き上がった美月が、自分の異変を訴えたのだ。


「あ、あれ、お腹が温かい……」


「な、何? もうか? それは、身籠った印じゃ。急ぎ服を着よ。裸で戻ることになるぞ!」


 祥子はあわてて、昨日、美月が着てきた洋服を出した。舞衣も手伝い、大慌てで服を着せる。


 美月は、昨日の性交で、一発妊娠したのだった。




 ……性交しても、その瞬間に妊娠する訳でない。


 抽入された精液の中の精子が卵子のところまで泳いでゆき、たどり着いて「受精」となる。

通常は、性交後一~二時間後のこと。

 もちろん、卵子が無ければ受精に至るはずがない。

卵子の寿命は二十四時間。排卵があって、それに二十四時間以内に精子がたどり着けば、受精ということになるのだ。


 だが、この段階では、まだ受精に過ぎない。母体とはつながっていない、単独の受精卵だ。


 この受精卵が卵管を通って、約一週間で子宮にたどり着き、母体とつながる「着床」となる。

 着床して、やっと妊娠完了だ。


 つまりは、性交から妊娠まで、本来なら一週間程度は掛かるはずなのだ。


 しかし、この仙界にいると、受精から一日も経たずに着床してしまうということらしい。

 理由は分からない。

 分からないが、まあ、祥子が若いまま千年以上も生きているという不思議な空間である。通常のようにゆかなくて当り前と言えば、当たり前かもしれない。


 そして、着床完了=妊娠すると、光に包まれて消えるように元の世界へ戻るということなのだ。




「舞衣さん!戻ったら、舞衣さんをおとしいれたあいつらの悪事、絶対暴いてやります。舞衣さんも、戻ってきてくださいね」


「私のことは、いいのよ。危ないことはしないで!」


 美月の体が白い光で包まれる。


「舞衣さん!絶対戻ってきてくださいよ!」


 舞衣への言葉を残し、美月は光と共に消えた。


 さっきまで怒りに震えていた沙織も、これを呆然ぼうぜんと見ていた。

 双子も。

 そして、恵美も…。



「美月、先に帰っちゃった。あれ、昨日ので妊娠したんでしょ?

一度で妊娠って、どれだけ運が良いのよ……」


「全くじゃ。うらやましい奴じゃ。さあ、次は其方そなたじゃぞ」


 舞衣はうなずいて、即座にベッドに向かった。

 続いて、流れるように着物を脱いでゆく…。


 透き通るような白い肌と抜群のプロポーション。双子は、うっとりと舞衣を見つめた。

 が、その双子の腕を取り、姉の沙織が無理やり外に引きずり出してゆく。


「お姉様、痛い!」

「いやだ、離して!」


「だめ!もう見ちゃ!」


 双子は抵抗するが、沙織に引きずられ、外へ連れて行かれてしまった。

そして、外から激しく言い争う声が聞こえてくる……。


 一方、恵美はそのまま中に残り、舞衣と、続く祥子の交合を見守った。

 無表情のままで…。

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