第14話 舞衣の嫉妬1

 四月二十三日、四日目。


 この日は、朝食後、昨日収穫してきたブドウのような果物の加工をするという。…酒造りだ。


 祥子と舞衣の部屋がある建物の裏、つまり温泉に、木製のたらいが用意された。そこへ、洗った果実を入れて行く。

温泉の湯で洗うのではない。温泉横に、近くの丘から水が引かれている。この水を汲んで、慎也が洗っているのだ。


 舞衣は、祥子の指示で温泉に入っている。

果実を洗うのを慎也一人に任せ、なぜ自分は温泉に入れられているのか意味が分からず、首をかしげながら。

 一方、慎也はどういうことか、理解している。

舞衣が果実を踏んで潰すのだ。そのために、綺麗に体を洗えということ…。


 祥子は慎也が理解していることを承知で、何も説明せずにあごで慎也に指示する。

 慎也は、湯に入っている舞衣に立つように言った。


 さすがに裸を見られるのにも慣れてきたようで、それほど恥ずかしがらず、指示通りに舞衣は湯の中で立ち上がった。

ただし、頭に「?マーク」をたくさん浮かべながら…。


 慎也は、その舞衣の足を地に着けないように、お姫様抱っこをする。


「えっ、な、なに?」


 驚く全裸の舞衣をそのまま抱いて運び、果実の入っているたらいの中に立たせた。


「はい、踏んで潰してね」


「えっ…。あ、足で?」


「だから、祥子様は温泉に入れって言ったんだよ。それに、着物着てると汁が飛んで汚れるし…」


「そういうことか~」


 舞衣は納得し、ぺったんぺったん、足踏みを開始した。

だんだんと果実がつぶれて濃い紫色の液体になってゆく…。


「これを容器に入れて、置いておくだけで酵母こうぼ菌が繁殖し、発酵して酒になるんだよ。

さらに、酢酸さくさん発酵すると、酢になる。ワインビネガーだね」


 慎也の説明に、舞衣は足踏みしながら頻りに感心している。祥子は面白そうにうなずいている。


「昨日の鳥のことといい、ワラワが何人もから得た知識じゃのに、其方そなたは本に博識よのう」


「いえいえ、こういうことが好きなだけです」


 慎也は手を振って、謙遜した。だが、確かに「普通の人」には無い知識である。

サバイバル願望の「お一人様」、面目躍如といったところか…。


 足が赤く染まってしまったと一人騒いでいる舞衣を温泉に入れ、慎也は果実の汁を祥子が用意した発酵用の容器に移して、所定場所に運んだ。


 染まった足を気にしながら、舞衣も温泉から出てくる。


「色が付いたくらい気にするな。すぐに落ちてしまう。

それに、今はこの三人しかおらぬのじゃ」


「それは、そうですけど…。気にするなって言われても、気になっちゃいます!」


 舞衣がよくする、ほおを膨らます表情。可愛らしい。



 酒造りの後は、畑仕事だ。生きて行く為には働かなければならない。

 木に隠れて見えていなかったが、畑奥に、もう一つ木造二階建ての建物が見えた。


「あそこは作業場じゃ。糸つむぎやはた織りをする。二階はカイコ部屋じゃ」


「養蚕もしてるんですか?」


「うむ、もちろんじゃ。糸も布も自前じゃ。他に誰もおらぬでな」


 祥子は慎也に感心していたが、慎也は祥子の方がよっぽど凄いと、改めて感じた。


「今は時期でないので、カイコは休みじゃ。ここのカイコは、人の世のモノとは少し違うようじゃの。ここに元々おった種類じゃ」


 そういえば、こっちの世界に来て、虫を見ていない。

 蝶も蟻も、一匹も見ていない。でもカイコはいるのか…。不思議な世界だ。


「さて、今日は芋掘りじゃ。十株くらい掘ってもらおうかの」


 祥子の指示で、畑の芋を掘る。


 主食の芋。地上部はつるになっている。そしてムカゴ(蔓に出来る小さな芋)が付いている。やはり、山芋・長芋の類なのだろう。

ただ、形はずんぐりしていて下部が大きく、長さも二十センチ程度。だから掘りやすい。

 掘った後は、大き目のムカゴを十個、植え付けた。これが芽を出し、また大きく育つのだ。



 収穫を終え、籠に芋を入れて祥子の部屋の隣、調理場へ運び込んだ。

 今日の作業は終了。

 温泉へ入り、あとは、二階の部屋で、また…。

 とにかく、妊娠しないと舞衣たちは帰れないのだ。これからする行為が、彼女らにとって最も重要な事である。


 今日も舞衣から。

 舞衣は慎也を横にさせ、馬乗りになって、いきなりディープキスだ。


「あ、あの舞衣さん? 日に日に激しくなるように思うのですが、気のせいでしょうか?」


「ダメ?」


 ちょっと、すねたような表情を作る舞衣。

超絶美女に、こんな可愛らしい仕草をされたら、それだけで精を漏らしてしまいそうだ。


「ぜんっぜん、ダメじゃありません。続けてください」


 舞衣は、再び唇を重ねてくる。

 そして、昨日と同じポーズ。逆向きに跨って口で…。

 慎也も昨日と同じように、舞衣の麗しい部分を眺めながら……。


「ふぁ~っ、ひぃもちひひ!」


 舞衣は恥ずかしがること無く声を出すが、咥えたままで、声はくぐもる…。


 十分に刺激し合ってから、舞衣は向きを変えて右手で慎也のモノを誘導しながら腰を落とした。女性上位……。


 名器持ちのトップアイドルが行う、激しい攻め。とても我慢出来たものでない。


「あ、だめ、出る!」


「え、うそ、昨日より早いよ!」


 勢いよく舞衣の中に、慎也の精が注入された。

 舞衣は慎也をアソコに深く収めたまま、また、あのほおを膨らませる表情。


「早い! もっと我慢して!」


「無茶言わないでよ~。こんな魅力的な女性に、こんなにも攻められたら我慢なんて出来るはずないんだから…」


 ベッド横では、祥子が声を殺して笑っていた。


「舞衣よ。其方そなたは攻め過ぎじゃ。

えさせぬよう。出させぬよう。

緩急取り交ぜねば、男はすぐ果ててしまうわ」


「そんなものなの?」


 困惑した表情の舞衣。それもまた、かわいい。

 そして、二人は、まだ結合したままだ。


「そんなものなんです。舞衣さんのは、良過ぎるんです」


 再度、舞衣はほおを膨らませた。


「じゃあ、今度は俺が上になるから」


 慎也は舞衣とのつながりを解かずに体を起こし、体を入れ替えた。


 唇を重ね合わせる。繋がったまま。でも、動かさない。


 豊かな胸を…。

 舞衣はもだえる。

 しかし、慎也は繋がったままのモノを動かさない。


「ねえ、動かないと、気持ち良く無いんじゃない?」


「動いたら出ちゃうよ。舞衣さんと出来るだけ長くつながっていたい」


「いやだ…」


 舞衣は顔を赤めた。


「積極的なのも良いけど、恥じらう表情も堪んないよ」


「いやだ、やめてよう…。恥ずかしい……」


 それでも動かさない慎也。抱き合ったままの状態だ。


「ねえ、萎えちゃわないの?」


「全然! こうやって舞衣さんの心臓の音を聞いているだけで、果てちゃいそうだ」


「だめよ、そんなの! 私が気持ち良くない!」


 またほおを膨らませる。言葉責めを続けるのには経験が少ないというか、全く経験の無い慎也には、荷が重い。


「じゃあ、少しだけ動くよ」


 舞衣は嬉しそうにうなずくが、その笑顔が、また、たまらない。


 慎重に、ゆっくりと……。


 舞衣が締め付けてくる。まるで牛の乳しぼりのように慎也のモノに吸い付いて搾り上げてくるのだ。


「あ、だ、ダメだ。舞衣さん締め付けすぎ。出ちゃう!!」


「うそ!ダメよ!」


 しかし我慢できずに、そのまま射精してしまう慎也……。

抜かず、またほとんど動かずの二回目だ。


「これダメでしょう!抜いてないから、まだ一回!」


「だめじゃぞ~。射精したから二回じゃ」


 舞衣は祥子の念力で浮遊させられる。慎也とのつながりが、強制的に解かれてしまう形になった。


「ひゃ~、ちょ、ちょっと、祥子様!」


 浮遊のままベッド横へ空中移動させられ、そのまま坐らせられる舞衣。完全に不機嫌顔だ。

 妊娠するためには精液を抽入してもらえさえすればよい。そんなことは舞衣も分かっているが、やはり、それだけではダメ…。気持ちが満たされない。


(舞衣さん、ごめん! 明日はなんとか考えるから!)


 慎也は、心の中で舞衣に手を合わせて謝った。


 昨日と同様の祥子と慎也の長い交合を、舞衣は指をくわえてうらやましそうに見ていた。

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