救われる(しゅん過去編part1)

第5話 何もない

3年前………


『俺』は、街を歩いていた。

買い物しようとか、どこかへ行こうとか、そう言う目的すら持たずに…ただ、街を歩いていた。


ドンッ


なにかに、ぶつかった。

けど『俺』は、顔をあげずに歩き続けた


「おい!!何じゃお前!!」

「…」

「何じゃ?シカトか?」

「…」


『俺』は、気にせず歩き続ける


「待てって言ってんや!!」

ガシッ!!!!!

肩を掴まれて『俺』は、殴られた

だけど何も感じなかった、痛みも悲しみも


「ちょっとこいや!!!!!」


『俺』は、そのまま路地裏に連れていかれ

ボコボコにされた……


次の日……


また『俺』は、街を歩く

傷ついたその顔で、その体で。

何も治療していないので、血が滴る

そんな『俺』を憐れむように、街の人達は、過ぎ去って行った。


次の日も、その次の日も、滴る血液を拭いながら、ただただ街を歩く。


学校へは、行っていない。年齢的には、中学3年生、高校受験のための大切な時期だった。

けど『俺』は、中学へは行かない、高校へも行かない……


『俺は、死に場所を探していた………』


……………一週間後…………


歩いて、歩いて…歩き疲れて、足も動かない。けど歩き続けて。

足からも血が出て、気にせず歩いて……


ドンッ


また何かにぶつかった、けど気にしなかった。


「またお前か?」


そこには『俺』をボコボコにした奴がいた。

そうして『俺』は、また路地裏へ連れられて


…………殴られる


そう思った……

「何やってんの?」


そこには見知らぬ男がいて、不良の拳を握って口を開いた。


「随分前にここでボコボコにされてた奴がいたらしくてなァ」

「なんだよ、テメェもボコられたいか?」

「いやな、ボコられたいか?じゃなくてな……………何やってんだ」


その男は、ドスの効いた声で、不良にそう言った


「く…覚えとけよ」

と、弱いチンピラが良くいうような典型的な言葉を言って立ち去った。


「ようお前さん、大丈夫か?いや大丈夫じゃないか。お前さんこの後時間あるか?まぁここ最近この辺歩き回ってるようだし、時間あるよな」


そう言ってその男は、『俺』の手を掴んで、ある店に入った。


「マスター!!例の子供連れてきましたよ」

「おっ!来たか!とりあえず座れ」


『俺』は、カウンター席に座らせられた


「とりあえず、自己紹介からだな、俺は、リンドウ、秋雨リンドウ、そんでこっちがマスター」

「マスターだがそれじゃわからんだろ!わしは、秋林茂よろしくな」

笑顔で自己紹介する2人を見ても『俺』は、何も感じなかった……

「さ、お前さんも名前教えてくれよ」


『俺』は、少し間を置いて口を開いた


「………そめかえ…しゅん……………』



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