狐の呼坂

植原翠/授賞&重版

序章・雪の降る夜

 その物語は、ひとりの女のお節介から始まった。


「かわいそうに、怪我してる……」

 雪の坂道で倒れ込む、小さな子ギツネに歩み寄る。

 真っ白な雪にうずもれた脚をぴくぴくと震わせて、キツネは女を見上げた。

「ごめんね、こんなことしかしてやれなくて」

 女は持っていた白い手ぬぐいを、キツネの脚に巻きつけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る