「おのれ、土蜘蛛」と退魔師は式神少女を救うため土蜘蛛のアジトに乱入する

 一方その頃、篝は式神ならではの切り札である、痛覚遮断を使い小蜘蛛の責めを必死で耐え抜いていた。

「ほう……痛覚遮断か。味な真似をする式神だ。これはお前に対する評価を改めなければならないな」

 土蜘蛛は必死で責め苦に耐える篝に皮肉めいた目線で見つめる。所詮、最後には音を上げると踏んでいるのであろう。

「これで私を尋問するのは無駄だとわかったでしょう……早く私を解放しなさい!」

 篝は毅然とした態度で土蜘蛛の尋問を拒絶する!

「そうだな、苦痛を与えれば簡単にお前のご主人様のことを話すと思っていたが、浅はかであったようだ……」

 土蜘蛛はここで下卑た表情を見せた。篝は嫌な予感がよぎった。

「しかし苦痛で口を割らなければ、快楽で責めてみるのはどうだろうか? 痛覚遮断をしていても快楽を伴う愛撫はたまらないだろう」

「くっ、このけだもの! 貴方にはまともな倫理観はないのですか!」

 怒りに満ちた表情で土蜘蛛を睨みつける篝! このままでは青少年健全育成条例に引っかかってしまう!


 その時! 空間に歪みが走った!

「なんだ……俺の結界作成は完璧なはず。誰だ俺の巣に入ろうとする愚か者は?」

 次の瞬間! 結界は音を立てて割れて廃工場内に古河遊聖が転がり込んできた!

「主! どうしてここに!」

 篝は思わず遊聖に声を上げる!

「気に食わない奴のお節介を受けたんだ……まぁ、そんなことはもういい。土蜘蛛、篝を返してもらうぞ!」

 そう言うと遊聖は土蜘蛛に睨みつける!

「飛んで火にいる夏の虫とはこのことか! お前を殺して葛葉姫の力を永遠に俺のものにしてやる! 覚悟しろ!」

 土蜘蛛の言葉と共に小蜘蛛が一斉に遊聖に向かって迫ってくる! しかし遊聖は慌てず、炎の護符を小蜘蛛に向かって投げつける! 小蜘蛛はたちまち炎に焼き殺されて漸減していく! 炎への恐れは全生物共通だ。徐々に小蜘蛛は遊聖への距離を置くようになる!

「肝心な時に役に立たない小蜘蛛だ! 俺自身がやるしかないのか!」

 土蜘蛛の全身に妖力が漲る! 次の瞬間、右手から糸弾が放たれた! これを食らうと危険だ! 遊聖はとっさに簡易結界を張り糸弾を防御する! そして遊聖は絶えず移動して糸弾の狙いを定まらないようにした!

「くっ、流石は葛葉姫のお守り役だ……そう簡単に倒せんか!」

 土蜘蛛は歯噛みする! しかし遊聖も決定打に欠ける状況だ!ダメ元で雷の護符を土蜘蛛に向けて投げつけた! 雷の護符は弧を描くように土蜘蛛に向かって飛んでいく! 土蜘蛛は雷の護符に向けて糸を集中的に放射! 雷の護符は蜘蛛の糸に絡み取られ蜘蛛糸を電撃で焼き焦がすだけに終わった!

(やはり強力な妖魔には俺の付け焼刃の符術は効かないか……ならば!)

 再び雷の護符を土蜘蛛に向かって投げつける!

「また同じ手か……馬鹿の一つ覚えは俺には通用しないぞ!」

 土蜘蛛は雷の護符に向けて再び蜘蛛糸を集中放射する! しかし、それこそ遊聖の狙い! 遊聖は瞬歩で一気に土蜘蛛に向かって高速接近! 霊力で生成した刀で一気に土蜘蛛に向けて斬りつけた! これは土蜘蛛でも対応できない!

「しまった! 符術はブラフ……本命は霊刀の斬撃か!」

土蜘蛛はとっさに妖力を防御に特化するが、今回の霊刀の斬撃は速度が乗って切れ味が鋭かった! 土蜘蛛は一刀両断された!

「残念だったな……俺はこっちの方が得意なんだ」

「おのれ……退魔師! 次は絶対に殺してやる!」

 土蜘蛛は恨み言を叫ぶと消滅していった!


 遊聖は残心し周囲を警戒し終えると篝の方に向かっていた。蜘蛛糸に縛られた篝を解放しようとしたが、奇妙なことに少し触れるだけで蜘蛛糸は崩れ落ち篝は自由を取り戻した!

「あれ? もっときつく縛られてなかったっけ……」

「主! 私を助けてくれてよかったです……式神想いの主を持てて私は幸福です」

 篝は遊聖を強く抱きしめた!遊聖は篝の頭を撫でるが、篝の身体に小さな違和感を感じた。遊聖は篝に向けて優しくボディチェックをし、何かを取り出した。それはメロン味のチュッパチャップスだった。

「篝、どこかの駄菓子屋で買い物したのか?」

「主、何のことですか?」

「いや、こっちの話だ……篝、一緒に調理クラブの買い出しをするぞ。今から急いでスーパーに向かえば間に合うはず」

 遊聖と篝はスーパーにマカロニグラタンの材料を買いに買い出しに向かった。二人は笑顔であった。

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