エピローグ

 早咲きのサラが咲き、桜を模した花飾りが家や店の軒先に咲き誇る『桜祭り』の日。ローズ国は王太子殿下のご成婚で、王家の祝福の時だけ使える赤薔薇飾りもともに咲き誇った。ピンクと赤のコントラストが美しい中行われた結婚式も、王太子殿下と妃殿下になられたご婚約者様が幸せそうに寄り添っていて――まるで絵画を見ているように、すごく絵になっていた。きれいだったなぁ。


 国中祝福ムードの中、悪役だと思っていたレティシアわたしは、ヒロインだと思っていたアリスと一緒に無事二年生になれました。勿論、相変わらず仲がいいのよ。今日は午前で授業が終わるけれど、アリスのリクエストで・・・・・・前世、地震前日にみんなで食べた思い出のサンドイッチ。今日から新学期だし、『乙女ゲーム』展開を気にしていた莉香わたしの気持ち的に新しい門出ってことでのリクエストらしい。前世も今世も、やっぱり涼香アリスは優しいわ。



「聞いてレティ!」

「あら、アリス。ご機嫌よう。そんなに慌ててどうしたの?」



 最近のために淑女教育を熱心に受けているらしいアリスに、わざとらしく挨拶あいさつをしてみた。はっとした顔のアリスは、慌てたままだけど「ごきげんよう」と略式挨拶をし、直様すぐさま耳元で内緒話を始めた。



「ついに見つけたのよ! この世界アルバにいる『日本人』!」

「!!」

「彼女はの招喚者って言われてて、招喚者特有の持ち。でもって見た目は日本人らしく――噂では、中央大陸では馴染みのない『朝食』を出す専門のお店をやってるって」

「まさか、その朝食って・・・・・・」

「そう! 和食!って言うより、おにぎりとお味噌汁らしいよ!」

「それは・・・・・・行かないと行けないわね!」

「うんうん! 行こう!」



 実は中央大陸に居る招喚されたっていう『日本人』、私達のでよく知ってる人だったんだけど・・・・・・それはまた別の機会に。


 報告することに満足したのか、いつもどおり通常運転でベルナールのことをニコニコと話すアリス。今日も彼女の惚気のろけをいただく。うん、おなかいっぱいだわ。今日、たまごサンドなんだけど・・・・・・胸焼けして、入んないかも。こんな私ですが、今年もよろしくしてね?アリスちゃんや。


 ローズ国暦八四〇年 五月十一日

 レティシア・ロゼ・ペッシャール



※※※


「おじいちゃま、おじいちゃま! この続きはないの?」

「どれだい? あぁ、母様の日記じゃな。確かこの奥に・・・・・・」

「わたしもいつか、こんな風なお話書きたいなぁ」

「ははは。エミリーはお話が書きたいのか! おっ、これかな? これはただの日記だが――確かに面白いからな。エミリーも、まずは日記から書いてみるかい?」

「うん!」



 それが私の前世の記憶。まさか自分が、日記に出てきた『日本』に『笑美えみ』として転生するなんて思わなかった。今書いてるのは、そんな曾祖母様が体験されたお話から、覚えてる限り『エミリー』としての思い出をたくさん詰め込んだゲームのシナリオ。私の代に鹿たちがいたおかげで、シナリオはとても書きやすいわ。ありがとう、お馬鹿さんたち。


 それにしても。絵姿で見た曾祖母様が美しすぎて、どうしても出したかったんだけど・・・・・・普通の乙女ゲームに出てこない悪役令嬢としてしか、出せなかった。ラノベでよくある縦ロール装備しちゃったけど、綺麗なのは変わらないからいいよね? なんかごめんね、曾祖母様。





 恋したい女の子の夢が詰まった乙女ゲーム『花舞う国で恋をする』が完成するのは、もう少し先。


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