2.マドレーヌとゲームスタート?
ピンクのマドレーヌが転入して以来、日常がちょっと面倒になるのかと思っていた。けれど、予想に反して何もないままいつも通りに日常が進んでいく。取っている授業も違ったので、全く会わずに「あれ? 何か忘れてたっけ?」っていうくらい静かだった。アリスと二人で皆を待つ間、いつものサロンの隅っこでこのアルバにある地球と同じ物が手に入る場所の話をするくらいには。
これが
「
「リフってさ、
「そう! 仙台支部の人に『お菓子作るなら利府の梨買って帰りな!』って教えてもらって買ったやつ! そこと同じリフって名前で、梨が有名なの!」
「やばいね! 美味しいイメージしか浮かばない!」
前世を思い出してか、うっとりとし出すアリス。
「他にもあるよ! お母様のご実家の北公爵領にはフラノ地区があって、ラベンダーが有名だよ!」
「
「わかんない。でも、確かに北公爵領だね」
「へぇ~。今度、商会通してみるわ! ラベンダーで化粧品作りたいし」
「まだあるよ? 他国だけど、ホスタにはカヤマ地区があるし。
「シャインマスカット!? ていうか、なんで二回言ったの?」
「重要でしょ? 種有」
「・・・・・・そっか」
「あとね、センパスチルになるけどね? リダ地区が有名なミカンに、ツシロ地区は日本のより小ぶりだけど
「凄いね! 日本が全面的に出てる世界だわ」
「ねー。他にも探したら出てきそうだよね! ちなみに・・・・・・
「やばい!
「仕方ないよ。魔法のおかげでその他を
「あぁ、そーだね。魔法省の研究室とか行きたくないよね・・・・・・」
ちょっと
「ということで! 最近忘れてたけど、ピンクのマドレーヌのせいで食べたくなって作ったマドレーヌです!
「やったー! おいしそー!」
「ちなみにだけど」
「何?」
「西大陸南西沖に・・・・・・シチリア島もあるよ!」
「シチリア!? レモン!! レモンケーキ食べたい!」
手渡されたマドレーヌを食べながら反応するアリスは、口元にカスをつけている。本当に、私と競えるほどの食い意地が張っているのかもしれない勢いだわ。
マドレーヌ片手に皆を待つ私たちは、美味しい話で盛り上がっていた――のに、どてーん!!と大きな音で現実に戻された。
「いったぁ~いぃ!!」
驚くほど大きな音の正体は、あの・・・・・・なんだっけ? マヌ、ちがうな。マト、これもちがう・・・・・・もう『マドレーヌ』でいいよね? その最近見なかった『マドレーヌ』さんが、私たちの座っている横までスライディングしてきた音だった。何故スライディング? あれ?何か涙
何とも言えない表情でアリスと顔を見合わせていたら、ピンクマドレーヌのところへわちゃわちゃと数人の男子生徒がやって来た。あ、なんか見たことある顔がいる・・・・・・。
「大丈夫ですか!? 姫!!」
「姫、お怪我は??」
「我々が来たからには、もう大丈夫ですよ。姫」
「「・・・・・・ヒメ??」」
アリスと二人、目が点になっているかもしれない。え、何?この人『姫』とか呼ばせてるの? えー・・・・・・。
再び何とも言えない表情になっている私たちに、唯一の見知った顔が吠えてきた。いや、前も思ったけどさ――不敬罪とか怖くないの?この人たち・・・・・・。そりゃさ、学院は身分の差を鑑みないって言っても『限度』があるじゃん? ていうか、最近見なかったのって――もしかして、本当に『ヒロイン』にでもなろうと攻略者でも探してたのかな? ・・・・・・釣れたのは、モブしかいなそうだけど。
「ペッシャールめ!! よくも我が姫を」
「ちょっと、誰に向かってそんな口をきいているのです? メルセネールさ・ま?」
あ、アリスがキレだしたわ。その笑顔、リオ様といい勝負よ。そうよね・・・・・・見知った顔って、例の『
私が現実逃避に走っていきそうになっているところに、ピンクの方のマドレーヌが
「エミール様!! わたしが悪いのです!! わたしが貴族社会に慣れていないから・・・・・・レティシア様は」
「そんなことはない!! 姫、君は十分に頑張っているではないか!!」
「エミール様・・・・・・」
「姫・・・・・・」
「エミール! 抜け駆けとはズルいぞ!!」
「私だって、姫が頑張っているのを
「みんな・・・・・・ありがとう。姫はうれしいです!!」
「「「姫!!」」」
途中で、アリスも怒るのをやめて帰ってきた。何だろう・・・・・・この
勝手に『乙女ゲーム』?というか自分たちの世界を始めてる人たちは
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