闇の中へ

ピート

 

「先輩、お久しぶりです」街灯の下から男が現れた。気配など微塵も感じさせないそんな動きだ。

 先輩と呼ばれた男は、動じる事なく歩き続ける。

 その横を男は並んで歩き始めた。


「久しぶりだな。で、何のようだ?」

「相変わらずですね。隙がない。技のキレもそのままなんですか?」男は困ったように肩をすくめると、おどけて見せた。

「フン、お前もな。利き腕に荷物は持たない、痺れを残さないように常時ポケットの中で指は温められている。いい心がけだ」

「……」

「自然に相手の左側を歩いている。銃を抜いて構えた時、その方向に相手がいるからな。更に言えば、事の前に相手を突き飛ばす事もできる」

「……何が言いたいんです?先輩?」

「殺りにきたんだろ?違うのか?」男の表情は変わらない。

 眉一つ動かさず、当然の事と言わんばかりだ。

「……」男が銃を抜こうとした瞬間だった。

 光が一閃した。

「遅い」そう呟いた男の手には小さなナイフが握られていた。

「お前には向いていない。何度も言ったじゃないか……」そう吐き捨てると、鮮血を吹き上げる死体を背に、男は闇に溶けるように姿を消した。



 Fin

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闇の中へ ピート @peat_wizard

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